「諸星陽一」の記事 – マイナビニュース

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1961年にタイに進出した三菱自動車工業は、同国における累計生産台数で500万台を突破したことを記念し、益子修CEO出席のもと式典を開催した。式典はタイからも政府要人など多数のVIPを招いた大々的なものとなった。

三菱自動車のタイ現地法人は「Mitsubishi Motors (Thailand) Co.,LTD」(ミツビシ・モーターズ・タイランド、略称:MMTh)という名称。タイで初めての自動車輸出を行うなど、同国における三菱自動車の存在感は非常に高いものとなっている。記念式典の模様をレポートする前に、まずはMMThとタイの事情をお伝えしたい。

500万台突破記念式典の模様

タイは“東洋のデトロイト”

タイは“東洋のデトロイト”と呼ばれるほどに自動車産業が盛んな国として知られる。1940年代には自動車産業が存在しなかったが、1950年代後半から1960年代にかけては政府主導で自動車メーカーの工場誘致を積極的に行った。加えて、輸入自動車の関税を高く設定し、自国生産の外国ブランド車の税金は抑えることで、タイ国内での生産車のシェアを高めた。

さらに、輸出にも力を入れたことで、タイが東南アジアにおける自動車産業の中心となり、現在の産業形態を形成するに至っている。2017年のタイの自動車生産台数は約200万台と世界第10位だが、東南アジアでは最も生産量が多い。そのボリューム感は、英国の約170万台と比べると分かりやすい。なお、社名がMMThとなったのは、何度かの組織変更などを経た2003年のことだ。

タイは東南アジア随一の自動車王国に成長した

タイで50年を超える三菱自動車の歩み

そうした歴史の中でも、三菱自動車はタイの自動車産業にとって重要な存在となっている。タイにおける三菱自動車の歴史は、1961年に卸売り会社の「シチポール・モーター・カンパニー」を設立したことに始まる。1964年には組立会社を設立し、1988年にはタイからの自動車輸出第1号となる「ランサー」をカナダに輸出した。2010年に累計200万台を記録してからは加速度的に生産台数を伸ばし、2013年に300万台、2015年に400万台、そして2018年に500万台を生産するに至った。

三菱自動車のタイ生産を支えているのは、バンコクの南東に位置するレムチャバンにある工場だ。第1工場の稼働は1992年で、第2工場が1996年に稼働している。さらに、2011年にはプレス工場が稼働、2012年には第3工場が稼働し、グローバルスモールカーである「ミラージュ」の生産を開始した。同年には日本への輸出も始まっている。

立地に優位性

三菱自動車のタイ工場は、同国唯一の輸出港で、自動車輸出のほとんどを担うレムチャバン港の近くに3つある。この地区に自動車組立工場を持つ自動車メーカーは三菱自動車のみ。ここで「ミラージュ」「アトラージュ」「パジェロスポーツ」「トライトン」の4機種を製造している。部品の現地調達率も高い。

MMThの生産工場があるレムチャバンは、バンコクから100キロ程度離れた場所に位置する港町だ。事務機能をつかさどる本社はバンコク市内にあるが、100キロという距離は渋滞を考えなければさほど遠い距離ではない。MMThの各事業所は、バンコクおよびレムチャバン周辺に集中する。レムチャバン工場の至近には、開発拠点となるR&Dテストコースや輸出向け補修部品庫を配置。本社のあるバンコク北側には、トレーニングセンターと国内向け補修部品庫を配置している。

三菱自動車がタイに持つ拠点

日本の各メーカーもタイのバンコク周辺に生産工場を設けているが、レムチャバンに工場を持つのはMMThのみだ。MMThの場合、接岸した輸送船にそのまま自走で船積みが可能だが、レムチャバン以外に生産工場を持つ他のメーカーは、同港までをキャリアカーなどで輸送する必要があり、MMThの優位性が見て取れる。

輸出港に近い立地が三菱自動車の優位性となっている

生産能力は年間42.4万台

レムチャバン工場を構成するのは、第1~第3までの組み立て工場とエンジン工場だ。ピックアップトラックベースの乗用車ラインを備える第1工場では「パジェロスポーツ」を生産。第2工場ではピックアップトラックラインで「トライトン」を、第3工場では乗用車ラインで「ミラージュ」と「アトラージュ」をそれぞれ生産している。エンジン工場ではガソリンとディーゼルの双方を作る。

2018年3月末でのMMThの本社とレムチャバン工場の従業員数は計6,114人。うち5,600人弱がレムチャバン工場に勤務する。3工場を合わせた生産能力は年間42万4,000台にのぼり、2017年は35万6,000台を生産、稼働率は84%となっている。

現地調達率も高く、「パジェロスポーツ」では80%、「トライトン」では86%を占める。「ミラージュ」と「アトラージュ」では、日本からのノックダウンパーツはECUやクランクシャフトなどわずかなものだけで、その現地調達率は94%にものぼる。

2018年6月4日(月)午前10時(タイ現地時間)に始まったMMThの生産500万台記念式典には、来賓として佐渡島史郎日本国大使、三又裕生JETROバンコク事務所長などが来場。タイからはソムキット副首相をはじめ、ヒランヤー首相府省副大臣ら政府関係者のほか、MMThのアドバイザリーボードメンバーや主要メディア関係者などが訪れた。

式典のスピーチで三菱自動車CEOの益子修氏は、タイの「電動車インセンティブ」に参加することを表明。ASEAN地域における電動車製造のリーダーへの第一歩を踏み出した格好だ。

三菱自動車CEOがタイで語ったこと

一寸木(ちょっき)守一MMTh社長兼CEOのウエルカムスピーチに続いて登壇した益子修氏は、MMThにて500万台の生産が達成できたことに対する感謝を述べた後、その背景について語った。

「当社は、タイの国内経済が成長を続け、世界的な製造拠点となることができることを確信していました。長期的に自動車産業の成長を促進する貴国の政策が、当社のビジネスを支えてくれました。これがあったからこそ、当社は1961年からタイで投資を行うことができました」

「当社は1987年に販売会社と製造会社を統合することで、ビジネス基盤を強化しました。2003年にはミツビシ・モーターズ・タイランドを設立し、累計生産台数100万台を達成しました。累計生産台数は2010年には200万台、2013年には300万台、2015年には400万台に達しました。そして、今日500万台が実現しました」

さらに、益子氏はタイが同社のグローバル生産拠点であることを強調しつつ、タイのモータリゼーションが進もうとしている道について、次のように語った。

式典に出席した益子CEO(中央、右から2人目)

「今後、タイは電気自動車へのシフトを図ろうとしており、電気自動車に関する包括的なインフラの開発を支えながら、メーカー向けの施策を実施しようとしています。このような状況は、三菱自動車のクリーンなエネルギーのための施策と合致し、三菱自動車はタイ政府およびエネルギー企業と力を合わせて、約10年前から電気自動車のインフラ開発に取り組んでいます」

「ソムキット副首相が提供する『タイランド4.0』というインセンティブ政策は、タイを環境に優しい技術を導入していく国家へと変えるものです。私たちもタイの自動車電動化についてしっかりと調査し、その政策にしっかりと対応して行きたいと思っています」

タイにおいて具体的にどういうクルマを発売するなどという発言はなかったが、電気自動車(EV)もしくはプラグインハイブリッド車(PHEV)の製造について最初の一歩を示した今回の決断は、タイ、いやASEAN地域における、三菱自動車の存在感の大きさをあらためて誇示したものとなった。

広大な研修センター設立、ASEANへの波及効果に期待

三菱自動車はバンコク北部のパトゥムタニ県に「エデュケーション・アカデミー」と呼ばれる研修センターを設立した。約8,700平方メートルと広大な敷地面積を有する同施設では、販売会社のスタッフやMMThの社員などに対し、常時100~150人体制で研修を実施することが可能だ。MMThの生産500万台記念式典の翌日には、同センターの開設記念式典を開催した。

開設記念式典には前日に続き、益子氏や一寸木氏らが参加。施設内を見学するパートでは各セクションで担当者による解説も行われたが、一寸木氏が直接、益子氏や記者たちに説明する姿や、両CEOがスタッフに積極的に声がけする姿が見られた。

約8

「エデュケーション・アカデミー」は2018年初旬にすでにソフトオープンし、その機能を発揮し始めていたが、今回のグランドオープンにより、全ての機能が使えるようになった。この施設は、タイ国内における研修機能はもちろんのこと、ASEAN地域諸国の研修ハブとしての機能も果たすものと期待されている。秘匿関係についてもしっかりとしているので、発売前の新型車の研修なども行える施設となっている。

作業の“見える化”が特徴

施設内は実際に存在するディーラーなどを想定していて、セールスフロントやサービスフロント、サービスピットなどを模した研修室で実際の業務に則した研修を受けられるようになっている。そこには三菱自動車が理想とするディーラーの姿がある。特徴的に感じたのは作業の“見える化”で、サービス作業を待つロビーを模したソファのあるスペースには、撮影所セットのようにイラストでサービスピットが描かれていた。

施設内の様子

サービスピットには最新の機器が置かれ、質の高い作業が習得できるようになっているほか、コンピュータ作業の研修なども受けられるようになっている。その規模感、設備などは一流の雰囲気にあふれていて、ここで研修を受けた経験そのものが、三菱車の品質、ディーラーマンの資質について、よい方向に影響することは間違いなさそうだ。





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