富裕層に人気「高額保険」販売中止の背景 – BIGLOBEニュース

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マイナス金利政策の影響で、生命保険の値上げや販売停止が相次いでいる。特に保険料を前もって払い込む「一時払い終身保険」は影響が深刻。こうした保険商品は、死亡保障が高額で相続対策にも活用できることから富裕層の人気を博してきた。しかし現在、その多くが販売停止に追い込まれている。苦境にさらされる生命保険。その価値に変化は生じているのか——。

■多様化する個人の資産形成

今、個人の資産運用が多様化している。そして、数ある投資対象の中で注目されているのが、「NISA(少額投資非課税制度)」だ。NISAとは、金融機関に専用口座を開設し、そこで取得した上場株式等の配当や、上場株式等を売却したことにより生じた譲渡益に対して、通常、20.315%かかる課税を非課税とする制度で、2014年1月から開始された。

NISAは、非課税期間が5年間、非課税投資枠の上限が年間120万円と設定されているが、2017年度税制改正で非課税期間20年、非課税投資枠の上限を年間40万円とする「積立NISA」の新設が決まり、2018年1月から運用が始まる。日本国内の家計が保有する1800兆円もの金融資産のうち、現預金の占める割合は半分以上。政府はこれらを投資に誘導し、経済活性化を図ることを目的に、同制度の導入、拡充を行っている。

2016年12月末におけるNISAの口座開設数は1069万口座、買付額は9兆4756億円となっており、利用が急速に進む。

また、「確定拠出年金」の利用の伸びも著しい。確定拠出年金とは、企業や個人が毎月一定額の掛金を拠出して、その資金を自ら運用し、それによって得られた給付金を原則60歳以降に年金や一時金として受け取るもので、運用の結果次第で将来の年金額が変わる。

社会保障費が増大し続け、公的年金の将来性が危ぶまれる中、「自力で老後の資産を蓄えたい」と考える人の増加から、2001年10月の開始以来、企業型、個人型合わせた加入者は約640万3008人を数える(2017年3月末現在)。

確定拠出年金の特長として挙げられるのは、さまざまな税制優遇措置が用意されていることだ。例えば、個人が拠出した毎月の掛金は全額所得控除の対象となる。また、NISAと同じく運用益が非課税なため、利益をそのまま受け取ることができる。さらに、運用成果を年金や一時金として受領したときは、公的年金等控除、退職所得控除を受けることが可能だ。政府としても確定拠出年金を推進する考えで、2017年1月からは個人型確定拠出年金にiDeCo(イデコ)の愛称を付け、加入対象者の幅を公務員や専業主婦などにも拡大した。

■投資対象としての魅力が薄れる生命保険

一方、生命保険はどうだろうか。生命保険の保険商品には大きく2種類がある。ひとつは、保険料は高いが、解約返戻金、満期金等を受け取れる「貯蓄型」。もうひとつが、保険料は安いが、保険期間が限定されていて、解約返戻金等がない「掛け捨て型」である。貯蓄型には終身保険、養老保険、学資保険などがあり、保険商品の主力である。契約者に約束する運用利回りである「予定利率」が高いほど、高い死亡保険金、解約返戻金が期待でき、その点で貯蓄型保険は資産運用の対象となりうる。

しかしながら、日本銀行が2016年1月、発表したマイナス金利政策が、貯蓄型保険に激震を走らせている。マイナス金利により、民間の金融機関が日銀に預ける当座預金の一部は、「使わずにいると手数料がかかる」状態となっている。そのため、金融機関の多くが国債などの購入にその資金を充て、2016年7月には長期金利(新発10年国債利回り)がマイナス0.297%を記録した。

生命保険会社は、契約者から集めた保険料を投資運用することで利益を得ている。運用といっても、顧客からの積立金の目減りを防ぐため、主な運用先は安定した利回りを期待できる国債である。しかし、マイナス金利導入以降、生保各社は国債の利回り低下で予定利率を保証できなくなっており、その結果、貯蓄型保険の多くで販売中止、予定利率の引き下げが発表された。

その中でも、保険料を前もって一括で払う「一時払い終身保険」は影響が特に深刻で、最終的に高額の死亡保険金を受け取れることや、相続対策にも使えることで資産家の人気を博してきたが、その多くが販売中止に追い込まれている。

直近の2017年4月からは、日本生命の終身保険は40歳で契約した場合、男性は22.1%、女性は27.3%、毎月の保険料を値上げ。明治安田生命の月払い学資保険は30歳で契約した場合は9.7%増、住友生命の個人年金保険も30歳契約の場合は男性は17%増、女性は16.5%増となっている。

■遺産相続で発揮される生保の力

マイナス金利の中で、投資対象としては、生命保険はその魅力が薄れつつあると言えるが、そもそも、生命保険に加入する目的のほとんどが「ガンや死亡などもしものときの保障」であり、そうした事態への備えとしての機能が、生命保険の最大の価値だろう。

さらに相続が発生すると、生命保険金にはさまざまなメリットが生じる。相続税では「3000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除枠が設けられているが、生命保険金にはこれとは別に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がある。この非課税の適用を受けるためには、保険料負担者と被保険者が被相続人で、受取人が相続人である必要がある。この非課税を適用できれば、例えば、配偶者と子ども3人がいるケースでは、受け取った生命保険金のうち2000万円が相続税の課税対象から除外されることになる。

また別のケースで、被相続人が保険料を負担している生命保険契約で、被保険者が配偶者や子どもなどの相続人である場合、相続発生時には、保険料負担者が死亡したものの、配偶者や子供などに保険事故が発生していない状況が生まれる。このような保険契約は、相続税の課税対象となり(掛け捨て型を除く)、原則として「相続発生時に契約を解除する場合に支払われることになる解約返戻金」相当額で評価される。

一般に、保険料払込期間中は、負担した保険料の合計よりも解約返戻金の方が低く設定されている。相続税では、現金は額面で評価されるのに対し、この場合の生命保険契約は解約返戻金相当額で評価されるため、現金で負担した保険料の合計と解約返戻金の差額分、相続財産を圧縮でき、結果的に節税となるのだ。

こうした保険事故未発生の保険契約は相続財産から見落とされやすく、税務調査で申告漏れを指摘され、発覚することも多い。財産評価のときには、特に注意しよう。

ほかにも、生命保険を利用すれば、相続発生後すぐにまとまった手元資金を用意することができる。相続が発生すると、被相続人の銀行口座は凍結され、引き出しができなくなる。しかし、葬儀費用の支払いなど、相続後にお金が必要となる場面は多い。そうしたとき、手続きを踏むことで迅速に手に入る保険金は、残された家族にとって大きな助けとなる。

さらには、生命保険金は、遺産分割でも力を発揮する。生命保険金はみなし相続財産に分類され、相続財産ではない。つまり、遺産分割の対象とならず、保険金の配分について、相続人は遺留分を主張することができない。通常、遺言があっても、相続人全員の合意があれば、遺言と異なる遺産分割が可能であり、被相続人の意思を反映することができない場合がある。しかし、生命保険金は契約者の意思により確実に受取人に受領させることができ、その点、相続について遺言よりも「強力に」作用すると言える。

■遺言で保険金受取人は変更できるか

ところで、「生命保険金の受取人を○○に変更する」とする遺言は有効だろうか。これについては、これまで法律上の定めがなく、保険会社によって個別の対応を行ってきた。しかし、2010年4月に施行された「保険法」によって、「遺言による保険金受取人の変更ができること」が明文化された。

この場合であっても、遺言を発見し、遺言の中に保険金受取人変更の記載があった場合は、すぐに、保険会社にその旨を通知しなければならない。万が一、通知がないまま、保険会社から保険契約上の受取人に保険金が支払われてしまうと、遺言で指定された受取人は、保険金を受け取ることができなくなる。

遺言で受取人変更が可能になったといっても、受取人の変更を希望する場合は、遺言ではなく、やはり保険契約上の変更手続きを生前に行っておきたい。遺言による受取人変更は手続きが複雑になるほか、保険契約上の受取人と遺言で指定された受取人が異なる場合、両者の間で法的なトラブルとなる可能性が高いからである。

いずれにしても、生命保険には、ほかの投資対象にはないさまざまな特長がある。生命保険の持っている価値を見極め、例えば、税理士やファイナンシャルプランナーと相談した上で、自分に合った商品を見つけることが、何より大切と言えるだろう。

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藤宮 浩

フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)代表

株式会社フジ総合鑑定 代表取締役

埼玉県出身。1993年、日本大学法学部政治経済学科卒業。95年、宅地建物取引主任者試験合格。2004年、不動産鑑定士試験合格及び登録。12年、フィナンシャルプランナーCFP登録。04年に株式会社フジ総合鑑定代表取締役に就任し、相続不動産に強い不動産鑑定士として、徹底した土地評価を行うことで有名。主な著書に税理士・高原誠との共著である『あなたの相続税は戻ってきます』(現代書林)『日本一前向きな相続対策の本』(現代書林)、不動産鑑定士・小野寺恭孝との共著である『これだけ差が出る 相続税土地評価15事例 基礎編』(クロスメディア・マーケティング)。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。フジ総合グループ(https://fuji-sogo.com/

高原 誠

フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)副代表

フジ相続税理士法人 代表社員

東京都出身。2005年税理士登録。06年、税理士・吉海正一氏とともにフジ相続税理士法人を設立、同法人代表社員に就任。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間600件以上の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。

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( フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)代表、株式会社フジ総合鑑定 代表取締役 藤宮 浩、フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)副代表、フジ相続税理士法人 代表社員 高原 誠)






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