FRB「物価2%後」の難路 金利高・ドル高が景気下押し – 日本経済新聞

Home » 08物価 » FRB「物価2%後」の難路 金利高・ドル高が景気下押し – 日本経済新聞
08物価, 国内企業物価指数 コメントはまだありません



 【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、6月中旬の次回会合で追加利上げに踏み切る可能性を示唆した。利上げ加速の可能性も取り沙汰され、住宅や自動車のローン金利が上昇、ドル相場も強含むなど、景気を下押しする要因も出てきた。米景気は大型減税による追い風と金融引き締めによる逆風が綱引きし合う異例の局面にある。

 「物価上昇率は目標の2%前後で当面推移するだろう」。FOMC後に公表した声明文では、物価情勢の判断を引き上げ「さらなる利上げが正当化される」と明言した。物価指数は3月に1年1カ月ぶりに2%台に上昇し、主要中央銀行でいち早く物価目標を達成してみせた。

 6月中旬の次回会合で利上げに踏み切れば、政策金利は1.75~2.00%に上昇し、2008年夏以来の水準となる。同年秋のリーマン・ショック後に続いてきた「超低金利時代」も終わりが近づく。市中金利も上昇し、好調な米景気を徐々に冷やし始めた。

 米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、期間30年の固定型住宅ローン金利は4月末に4.58%となり、4年8カ月ぶりの水準となった。17年末からの上昇率は約0.6ポイントとFRBの利上げ幅より大きい。

 米国の住宅価格は2月に前年同月比7%弱も上昇するなど高騰しており、そもそも投資が難しくなっていた。そこに金利上昇が加わり、1~3月期の住宅投資の実績は前期比横ばいにとどまった。

 新車向けの自動車ローン金利も5.6%と1年間で0.6ポイント高まった。フォード・モーターやトヨタ自動車など自動車各社が販売台数を4月にそろって落とした。

 金利上昇は外国為替市場ではドル高圧力となる。主要通貨に対するドル指数は直近2カ月で5%近くも上昇した。米国とドイツの長期国債の利回り差が29年ぶりの水準に広がるなど、金利収入が見込めるドルに資金が集中している。ドル高は米経済の輸入価格を押し上げるとともに、米企業の輸出競争力を下押しする。

 米景気は今年5月で拡大局面が8年11カ月目に入り、戦後2番目の長さとなった。ただ、金利と物価の上昇は、国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費を弱めかねない。FRBの利上げが行き過ぎれば、足元の景気の寿命を縮めかねないリスクがある。

 それでも市場には「FRBが利上げペースを加速する」との観測が浮かぶ。賃上げや原油高が物価をさらに押し上げるとみられるためだ。

 先物市場では「6月の会合で利上げに踏み切る」との予測が既に95%に達し、9月、12月の利上げ観測もそれぞれ75%、45%と高い。FRBは年内の追加利上げを2回としてきたが、市場は3回に増えると見込み始めている。

 実際、米景気はトランプ政権が決めた大型減税によって、当面は上振れ余地がある。米議会は歳出を2年で3000億ドル増やす予算関連法も成立させており、国際通貨基金(IMF)は18年の米経済成長率が2.9%まで高まると予測する。金融危機後の景気拡大局面は戦後最長の10年間まで伸びるとの見方が強い。

 ただ、JPモルガン・チェースによると、財政刺激効果のピークは個人減税が18年4~6月期、歳出拡大は同10~12月期だという。その後は景気押し上げ効果が徐々に弱まるとみられ、FRBのかじ取りは難しくなる。

 米国は11月の中間選挙を控え、政治の季節に再び突入する。ツイッターで側近を手厳しくこきおろすトランプ氏だが、実は金融政策には一度も注文をつけたことがない。失業率が下がり、株価も長く右肩上がりで上昇してきたからだ。

 ただ、そうした政権と中銀の蜜月には、変化の兆しもある。ホワイトハウスで通商政策を担うナバロ補佐官は4月、FRBの利上げ路線に「インフレの兆候もないのに不思議だ」と疑問を呈した。利上げでドル高が進めば、貿易赤字が拡大するリスクがあるためだ。

 パウエル議長率いるFRB新体制は、2日の声明で2%のインフレ目標の達成に自信と安堵感をのぞかせた。ただ、物価停滞からようやく脱した先に、新たな難路が待ち構える。





コメントを残す