[2017衆院選][争点を追う 4] 中山間振興 大規模偏重 募る不満 – 日本農業新聞

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広島 地域実態踏まえよ

 広島県北西部に位置する安芸高田市の市街地から車で5分。田と田の段差は5メートルほどもあり、急傾斜のあぜが、壮観な風景をつくり出している。

 「こんな場所で炎天下にやる草刈りは本当に大変。慣れていないと危険だ」と苦労を語るのは、同市向原町戸島地区の平田道雄さん(63)。5戸7ヘクタールで、中山間地域等直接支払制度の協定を13年間続けてきた。認定農業者や法人はおらず、各自の土地は自ら管理。作業できない人が出れば、力を合わせて担ってきた。

 安倍政権は、担い手への農地の集積・集約を推し進める。だが、中山間地域では、支援対象を大規模経営体に絞り込む農政への不満が募る。地域政策の柱に位置付ける中山間地域等直接支払制度も、活動は縮小傾向だ。

 同市の15年度の協定数は187と、前年度から22減少。協定面積は1985ヘクタールと2割も減った。市は「人手不足で活動を続ける余力がない」(産業振興部)という。

 平田さんらは今年、高齢化で農地の管理が難しくなった近隣の集落(5ヘクタール)を協定に加えた。夏には草が伸び切って景観が悪く、獣のすみかになれば他にも影響が出る。 「大規模な担い手といった点の政策だけではなく、地域をカバーした面の政策が必要だ」と平田さんは要望する。

 安倍晋三首相が「息をのむほど美しい」と賞賛する棚田の景観を守る基盤は、揺らいでいる。

 

農地集積に限界感

 高齢化は勢いを増す。全国の総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は、2000年の17・4%から16年は27・3%に上昇(内閣府)。中山間地を多く抱える中国各県は30%前後と、全国平均を超える。

 高齢化による集落機能の弱体化で、担い手にしわ寄せが来ている。広島県安芸高田市の羽佐竹農場は10集落、約50ヘクタールを借り受ける。20代を含む5人を雇用。市を代表する担い手だが、一層の集積には慎重だ。

 松川秀巳代表は「頼まれるのは、機械が入れず水利も悪い農地ばかり。国が期待する面的集約は簡単じゃない」と理由を語る。草刈りや水路補修、鳥獣害対策の資金、労力はほとんど持ち出し。生産に専念できる環境ではない。

 政府は13年、担い手の米生産費を10年で4割減らす(60キロ当たり約9600円)目標を提示。実現に向け、担い手の農地利用率を5割から8割に高めるとし、14年度に農地中間管理事業を始め集積を進めてきた。

 松川さんは「中山間地にはそぐわないやり方」と訴える。同市では担い手の農地利用率は3割未満。「兼業や小規模の農家がやめたら、農地や水路は誰が面倒を見るのか。われわれには無理だ」と心配する。

 広島大学大学院助教の小林元氏は、現政府の姿勢を「米を60キロ1万円で作れる大規模経営体しか相手にしていない。切り捨ての農政だ」と指摘。集落機能の弱体化が加速する事態を危惧する。





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