懸念材料多すぎ動けず?…韓国銀行、金利11カ月凍結 – BIGLOBEニュース

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米ホワイトハウスで会談する、ドナルド・トランプ大統領(右)と韓国の文在寅大統領(左、2018年5月22日、資料写真)。(c)AFP PHOTO / SAUL LOEB〔AFPBB News〕

 2018年10月18日、韓国銀行(中央銀行)は金融通貨委員会を開き、政策金利を1.5%のまま据え置いた。

 金利凍結は11カ月連続だ。経済成長率の鈍化、不動産高騰、米国との金利逆転など韓国経済を取り巻く環境が複雑に変化する中で、韓国銀行は動けなかった。

 韓国の産業界や金融市場で、10月18日の金融通貨委員会は最近になく注目を集めていた。利上げに踏み切るのかどうか、事前の予想は割れていた。

首相、長官が相次いで利上げを求める

 「利上げ」と「凍結」を主張する声にはそれぞれ、それなりの理由があった。そこに政府・与党からの「注文」も出ていた。

 「利上げ」を求める声の中で、最も強かったのが、政府・与党からだった。

 「金利引き上げを深刻に考えるべき時期になったという意見に同意する」

 2018年9月13日、李洛淵(イ・ナギョン=1951年生)首相は、国会の答弁でこう答えた。政府首脳が「金利」にここまで踏み込んだ発言をするのは韓国でも異例だ。

 李洛淵首相は、「米韓金利逆転」に対する懸念をその理由に挙げた。

 リーマンショック以降、米国の金利は韓国より低かった。

 ところが、2018年3月に米連邦準備理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年1.5〜1.75%に引き上げ、米韓金利が逆転した。

 FRBは6月に続いて、9月26日にも FF金利の誘導目標は年2.00〜2.25%に引き上げた。年内にさらに1回利上げをすることも明らかになった。

 「金利を引き上げなければ、資金流出など米韓金利逆転に問題が多く発生する」

 李洛淵首相はこう述べた。

イエレン前議長の懸念

 すでに証券市場などからの資金流出は始まっている。

 韓国の政府や金融機関、産業界にはトラウマがある。1997年に発生した通貨危機の際、ウォンが暴落して外貨が一気に流出してしまった。

 今の韓国は、分厚い外貨準備高があり、経済基盤も当時とは比較にならないほど強く、「通貨危機」が起きると見る専門家は韓国内には少ない。それでも、懸念は残る。

 「米中貿易摩擦の激化によって、韓国や台湾などは中国向けの中間財輸出が減少するという影響を受けるだろう」

 「韓国は、マクロ経済と財政が堅固で外貨保有高も厚い。それでも1997年のような突然の危機が全く起きないと保証することはできない」

 10月12日、韓国の「毎日経済新聞」のフォーラムに出席するために訪韓したイエレン前FRB議長は、講演とインタビューでこう語った。

 米韓金利逆転と米中貿易摩擦激化で、ウォン安、外貨流出という悪循環になることへの警戒感は根強い。

不動産高騰の原因は低金利?

 政府内からは全く異なる理由で利上げを求める声も強かった。

 「低金利政策が続き、市場流動性の過剰が不動産高騰の大きな理由だ。前の政権から続いている低金利政策が政権が変わっても変わらないことが流動性過剰の原因だ」

 10月2日、金賢美(キム・ヒョンミ=1962年生)国土交通部長官は国会答弁でこう話した。

 2017年5月に文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)政権が発足してから、ソウルを中心として不動産価格が急騰している。

 不動産対策を「経済格差解消」の政策の1つに掲げる今の政権としては頭の痛い問題だ。

 不動産高騰の理由は複雑だが、「低金利」もその一因であることは間違いない。これといった「不動産対策」を実行できない政府から見れば、「金利」を何とかして上げろ、と言いたいところでもある。

 一方で、「利上げ」を懸念する声も少なくはない。

経済成長見通しをさらに下方修正

 まずは、経済状況だ。輸出はまずまずだが、消費はいまいちだ。雇用情勢に至っては「過去最悪」とまで言われている。

 韓国銀行は、金融通貨委員会を開いた10月18日、2018年のGDP(国内総生産)成長率見通しを年率2.9%から2.8%に下方修正した。7月に3%から2.9%に引き下げたのに続く修正だ。

 原油高、米中貿易摩擦の激化、空前の半導体好況に変化の兆しが見えるなど韓国経済を取り巻く環境は、先行きマイナス要因の方が多い。

 「利上げ」に踏み切れなかった最大の要因は「景気」だ。

膨れ上がった家計負債

 家計負債の問題も頭痛の種だ。韓国の家計負債はここ数年さらに増加し、1500兆ウォン(1円=10ウォン)にまで膨れ上がった。

 かなりの部分は不動産向けと見られる。

 借金がこれだけ多いと、利上げによって、返済に問題が生じる比率の上昇も考慮しなければならない。

 不動産対策で利上げを主張する声がある一方で、利上げによって負債の返済に問題が生じると経済に大きな打撃となりかねない。

 それでも、利上げを求める声に勢いがついていることは間違いない。米国の相次ぐ利上げの影響はやはり大きいのだ。

 10月18日の金融通貨委員会では、利上げを求める委員が2人いた。

 韓国銀行は発表資料で今後の利上げについて「今後の成長率と物価動向を綿密に検討して判断する」と述べた。前回までは「慎重に判断する」との表現だったが「慎重に」が取れた。

 李柱烈(イ・ジュヨル=1952年生)韓国銀行総裁は10月18日の記者会見で「通貨政策を住宅価格の調整手段に使うことは効果が大きくない」と語った。

 政府や与党から出ている「不動産高騰責任論」を一蹴するとともに、「政治の圧力」で利上げに踏み切ったという印象を与え、韓国銀行の独立性に関する議論が出ることをいったんは打ち消した。

 だが、「10月に利上げしなかったことで、11月の利上げが決まったようなもの。先送りしたことで今度は、みんな織り込み済みとなって、利上げの効果が薄れることになりかねない」(韓国紙デスク)という指摘も多い。

 輸出を増やすためにはウォン安がいい。それでは資金流出の恐れがある。

 不動産高騰を抑えるためには利上げがいい。それでは家計負債問題が心配だ。景気をさらに冷やす恐れはないのか・・・。

 利上げがいいのか、凍結でいいのか・・・景気後退の中でその方程式はさらに複雑になっている。

 景気後退の中で利上げを選択する可能性が高いところに韓国経済の苦悩がある。

筆者:玉置 直司





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