EVの豊富な電力貯蔵の活用法は非常用からZEH、VPPまで – 電気新聞

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テクノロジー&トレンド

電気自動車と電力システム 第1回 3つの期待

東京都市大学工学部電気電子工学科准教授 太田 豊





2018年10月12日

 電気自動車(EV)の普及には、充電インフラとそれを支える電力ネットワークとの協調が不可欠となる。高性能な電力貯蔵・電力変換・ネットワーク接続機能を有する電気自動車は、デマンドレスポンスを標準実施できる電力需要、再生可能エネルギーの余剰電力吸収、そして、停車時に電力ネットワーク側に給電するバーチャルパワープラントの3つの役割が期待されている。第1回ではまず、電気自動車×電力ネットワークのテクノロジー&トレンドの概要を紹介する。
 

充電する電源をゼロエミにするためには

 
 電気自動車の電力需要はどのくらいだろうか?
 日産リーフの電池搭載量40kWhで電費5km/kWhとすると、走行可能距離は200kmを超え、たまの観光や急な遠出もカバーできる。毎日40kWhをフル充電するわけではなく、片道15kmを往復する一般的な通勤利用では、帰宅後に普通充電3kWで2時間、6kWhを充電する。
 電力消費量としては、図1のように大型テレビ、洗濯乾燥機、食器洗い乾燥機など最近の家電と比べても大きく、帰宅後のタイミングは家電の利用時間と重複する可能性が高い。電気自動車の次の走行は翌朝であるため、充電タイミングをシフトするデマンドレスポンスの余地が大きいことが想像できる。
T&T EVと電力システム #1 図1
 
 電気自動車は走行時に排出ガスを出さないゼロエミッションビークルである。「充電の際の発電源はゼロエミッションなのか?」の疑問に対して、電気自動車への充電を太陽光・風力発電など再生可能エネルギー由来とする取り組みが行われている。職場での充電機会設定のためのワークプレースチャージングでオフィスビル・工場に太陽光発電が併設されれば、晴れている日中には電気自動車への充電機会が多くなる。周辺に風力発電が偏在する地域の住宅では、夜間、風力発電からの充電機会が多くなる。最近では、電気自動車と近隣の太陽光・風力発電が余剰電力の相対取引を行う仕組みも現れている。
 

EV搭載の蓄電池、日常使いは2割弱。残りを走行以外の用途に

 
 電気自動車の電池40kWhのうちの6kWhは日々の走行のため、残りの34kWhは観光や遠出の際に利用される。後者の利用率は低頻度であり、豊富な電力貯蔵を走行以外の用途にシェアリングする、様々なサービスが検討されている。
T&T EVと電力システム #1 図2

 
 その1つ目は災害時や停電時の電気自動車からの電力供給であり、頻度は極めて低いがプライスレスなサービスである。
 2つ目は、観光や遠出がなさそうな平日に、住宅や建物の太陽光発電や電力需要と協調するサービスだ。具体的には太陽光発電の自家消費率を向上させるとともに34kWhのいくぶんかを利用してピークシフトを実施する。これにより電気料金を低減できるだけでなく、太陽光発電の出力が大きい住宅では、ネットゼロエネルギーハウス(ZEH)を実現できるかもしれない。
 3つ目に期待されているのは、電気自動車や充電スタンドから電力ネットワーク側へ放電を実施し、分散型電源と同様にバーチャルパワープラント(VPP)の担い手となること。電気自動車は新たに電力エネルギーを生み出す発電源ではないので、継続的な放電には適さないが、電力ネットワークの状況に応じて充放電を機動的に実施する需給調整サービスや、地域の電力ネットワークに分散連系される太陽光・風力発電の出力変動を緩和するダンスパートナー(調整役)としての活用が有望視されている。
 以上のような電気自動車×電力ネットワークの技術課題や可能性を図2にまとめる。次回は、電気自動車と電力ネットワークのシステム・インテグレーションの実像やシステム構成を示してゆく。
【用語解説】
◆電費
電気自動車の走行時の消費電力を示す指標。標準的な条件での走行試験により測定されている。実走行時のガソリン車の燃費にkm/ℓが用いられるため、同様にkm/kWhが用いられることが多い。
◆ネットゼロエネルギーハウス
断熱・省エネ性能を向上させると同時に、太陽光発電システムなどの創エネルギーを導入することで、一次エネルギー消費量の年間での収支がゼロとなる住宅。
電気新聞2018年7月30日





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