効果薄に苛立つ米国、ロシアに過激な制裁発動か – BIGLOBEニュース

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ロシア東部ウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」に臨む、同国のウラジーミル・プーチン大統領(左)と安倍晋三首相(2018年9月12日撮影)。(c)AFP/Kirill KUDRYAVTSEV〔AFPBB News〕

分からないプーチン、もっと分からないトランプ

 「考えが浮かびました。平和条約を締結しましょう。今ではなく,年末までに。先決条件はなしです(聴衆の拍手)。聴衆の皆さんのご支持はお願いしていなかったのですが。ご支持ありがとうございます」

 これは先日ロシア・ウラジオストクで開催された東方経済フォーラム総会でのウラジーミル・プーチン大統領の発言である。

 これに対し先日開催された第73回国連総会で安倍晋三首相は「両国の間に横たわる領土問題を解決し、日露の間に平和条約を結ばなくてはなりません」と日本の外交スタンスが不変であることを明言している。

 そしてこの発言を受けてロシア側が強く反応する様子もない。

 想像するに、日ロ間の外交チャネルを通じてプーチン大統領の突然の提案(だと筆者は思う)をいかに軌道修正するかが話し合われ、安倍首相発言につながったのではないだろうか。

 いずれにせよプーチン大統領の突然の提案がこのまま終息すれば、これは日ロ間の外交チャネルの復元力を示すエピソードとなるだろう。

 一方、就任後2年近く経っても一向に分からないのがトランプ政権の対ロ外交だ。

 9月14日に米財務省傘下のOFAC(Office-of-Foreign-Assets-Control=外国資産管理局)はロシアのアルミ大手ルサールに対する制裁緩和ともとれる発表をした。

 しかし、9月20日にトランプ大統領は「米国の敵対者に対する制裁措置法」の実効性を高める大統領令(Executive Order)13849に署名しており、対ロ外交の方向性が読めない。

 何らかの方向性が明示されるのではと期待された9月25日のトランプ大統領による国連演説も、ロシアについては欧州エネルギー政策批判の文脈の中で副次的に触れられただけだった。

11月発動が懸念される対ロシア国債制裁の影響

 現在、ロシアビジネス関係者が特に懸念しているのが、11月にも発動されるかもしれないロシア国債に対する米国の経済制裁だ。

(現在米議会で審議中のDefending American Security from Kremlin Aggression Act あるいはDefending Elections from Threats by Establishing Redlines Actに基づく制裁が懸念されている)

 筆者も本年1月11日付のコラム『ロシアに新経済制裁、米国が検討中』(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52045)で、それが発動された際のインパクトを「2014年末〜2015年初のルーブル危機の再来か」と書いた。

 しかしそれから約9か月が経過した今、もはやそのインパクトはさほど大きくないのでは、と思うようになった。理由は大きく分けて3つある。

 第1にロシア側の準備だ。

 ロシア財務省・ロシア中央銀行、いずれも「ロシア国債に対する制裁が発動された際には行動する準備がある」旨の発言を行っている。

 米国の制裁発動を遠ざけようとする「はったり」とも解釈できるが、ロシア国内景気がさほど良くない中でロシア政府が決定した2019年からの付加価値税引き上げ、ロシア中央銀行による利上げ、からはロシア政府・中央銀行の強い意思と能力が垣間見える。

 第2に投資家の準備だ。

 例えばロシア中央銀行によると、ロシア国債発行残高に占める非居住者保有比率は今年1月1日時点では33.1%だったが、 9月1日には26,6%まで低下した。

 この結果、1月時点に比べれば制裁発動のインパクトは小さくなっているはずである。

 これをもって「発動せずとも既に制裁が効いている」とする見方もあるが、時間をかけて投資家が制裁を織り込んだことで、市場の行過ぎ(overshoot)が回避されたとも解釈できる。

図表1 ロシア国債発行残高に占める非居住者保有比率(%)

 第3に環境だ。

 ロシア経済を左右するとされる原油価格は、今年1月平均では1バレル当たり69.1ドル(北海ブレント)だったのに対し、9月末現在1バレル当たり80ドル超で推移している。

 加えてロシア政府によれば、6月にOPEC(石油輸出国機構)などとの原油協調減産が緩和されたことから、足元のロシアの原油生産量(7月平均は1日当たり1121万バレル)は2016年10月に記録したピークに迫る水準だという。

 結果、外貨準備高は1月の4477億ドルから8月は4606億ドルまで増加している。

 なお今年3月1日時点でのロシアの官民合わせた対外債務が5237億ドル(うち政府・中銀が804億ドル)なのに対し、対外債権は9230億ドル(うち政府・中銀が4270億ドル)もあり、純対外債権国の地位は揺るがない。

 英エコノミスト誌の調査部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニットも9月のリポートで次のように述べている。

 「ロシア国債に対する制裁の影響は限定的となろう。ロシアの国債残高は少なく、財政は均衡か若干の黒字を維持すると思われる」

 「またロシア政府は潤沢な外貨準備を有している。ロシアは今年もGDP比3.5%以上の経常黒字を維持するとみられ、引き続きロシアは対外純債権国の地位を固めるだろう」

 「銀行危機も起きないだろう。金融セクターの多くは既に国家管理下にあるため、当局は危機に瀕した金融機関に十分な流動性を供給するだろう」

 「ロシア国債に対する米国の制裁は、ロシア政府による経済の『非ドル化』を促し、ロシア経済を潜在的な米国の制裁から隔離するだろう」

懸念される対ロ制裁の過激化と世界全体への副作用

 今年1月29日に米国財務省が議会に提出した『国債と金融派生商品に制裁を拡大した際の影響に関する報告書』はロシア国債に対する制裁について次のように述べている。

 「現行制裁を国債とその金融派生商品に拡大した場合、ロシア側が報復に出る可能性がある。また制裁拡大が米国企業や国際市場に悪影響を与える可能性もある」

 「加えて米国単独で制裁を拡大した場合、対ロシア制裁に向けた同盟国との一体感が損なわれる恐れもある」

 「ロシア経済の規模や国際的存在感、国際企業による米国制裁遵守の姿勢を考慮すれば、制裁拡大の規模や範囲は不確かで、米ロ双方にダメージを与えるかもしれない」

 つまり「ロシア国債に対する制裁は副作用が読めないので使えない」というのが米国財務省のスタンスであった。

 しかし筆者が予想するようにロシア国債に対する制裁が効かないとなれば、米国の対ロ制裁が一層過激化することは必至だ。

 米国では現在、少なくとも8本の対ロシア制裁関連法案が議会で審議されているという。

 その中には、ロシア政府系銀行を国際決済システムから切り離す、ノルドストリーム2に本格制裁を加える、といった過激なものも含まれるという。

 より過激な制裁は、より過激な副作用をロシア以外の国々にもたらしかねない。

 早ければ米中間選挙後の11月にも発動されるという新制裁から目が離せない。

筆者:榎本 裕洋





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