もう一つの貿易紛争:エネルギー – Wall Street Journal

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――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 北米では新たな自由貿易協定が合意された。だが、中国石油天然気(ペトロチャイナ)が近く、メキシコ湾岸ではなく、カナダ・ブリティッシュコロンビア州を輸入拠点とすることになるかもしれない。

 中国国営の巨大エネルギー企業であるペトロチャイナは9月28日、カナダ初の液化天然ガス(LNG)輸出港プロジェクトに15%出資することに同意した。同プロジェクトは総額300億ドル(約3兆4000億円)規模で、カナダのインフラプロジェクトとしては過去最大。40%を出資するロイヤル・ダッチ・シェルや、他のパートナー企業も2日、出資に同意した。

 これは、ドナルド・トランプ米大統領が、同盟諸国との直接交渉で新たな貿易合意を達成することで中国の孤立化を試みる中での出来事だ。このタイミングは偶然のようには見えない。

 世界のエネルギービジネスは、常に地政学の影響を大きく受けてきたが、米国が重要な輸出国に浮上し、中国が世界最大の純輸入国である状況は、想定外の新たな要素をもたらしている。急成長している米国のLNG輸出業界は、結果的に巻き添え被害を受ける可能性がある。

 LNGカナダと呼ばれる同プロジェクトは、2020年代初めに出荷を開始する予定で、ガス出荷量は最終的に年間2600万トンに達する見込みだ。米国の昨年の輸出量は1400万トン程度で、世界全体の市場規模は2億8500万トン前後にすぎないことから、全体像が把握できるだろう。

 市場として急成長中の中国は、米国産ガスにすでに10%の関税を課しているほか、カタールと大型の供給契約を結んだばかりだ。ここにカナダが加わることで、米エネルギー企業の野心的な拡大計画は、より危ういものに見え始めている。

 皮肉なのは、貿易紛争以前には、中国市場のかなりの部分を手中に収めているという点で、米国は好位置につけているように見えていたことだ。米最大の輸出業者であるシェニエール・エナジーは2017年の段階で、将来の計画における対アジア販売の損益分岐点が、100万BTU(英国熱量単位)当たり7.50~8.50ドルになると推測していた。これは、カナダ西部から出荷されるLNGの推定価格(フランスの業界調査団体セディガスとカナダ・エネルギー研究所が算出)の9~12ドルを大きく下回る。

 だが、中国の関税が脅しの通り25%に引き上げられれば、米国産LNGは一夜にして費用曲線の下の方から中間に入り込むことになる。米国の輸入関税を背景にパイプラインやターミナルの建設に必要な鉄鋼の価格が上がっていることや、ペトロチャイナがすでに米国産LNGの購入の削減を検討しているとの報道を踏まえると、米輸出業者の上にたちこめる暗雲を無視することはますます困難になりつつある。

 中国の目先の需要を考えると、今年の冬に関しては、米国産LNGの輸入を回避することができないかもしれない。だが、米中間で貿易をめぐる緊張が高まり続けるならば、これからやって来る長い冬が、メキシコ湾岸の米輸出業者にとっては厳しく、北方のカナダにとっては驚くほど暖かいものになるかもしれない。





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