日本にも「まさか」が起こり得る“トランプリスク第2幕”を警戒せよ – ASCII.jp

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Photo by Keiko Hiromi

 3月23日から鉄鋼・アルミニウムの対米輸出品に高関税がかけられた。事前には、友好国・同盟国は輸入制限の対象から外されるという見通しから、日本も除外されるという楽観論が広がっていた。結果的に、そうした楽観論は完全に打ち砕かれた。

 トランプ大統領は、「安倍首相らは『こんなに長い間、米国をうまく騙せたなんて信じられない』とほくそ笑んでいる。そんな日々はもう終わりだ」と述べたという。

 耳を疑うような言葉だが、秋の中間選挙を意識されていることは明らかだ。

「自国第一」を掲げて登場したトランプ政権は世界経済に様々な波紋を投げかけてきたが、「トランプリスク」の第二幕が始まるのを覚悟する必要がある。

日本にもスーパー301条適用
“円高誘導”の再現

 トランプ大統領は、各国の首脳に対し個人的な友好関係を築こうとはしているように見えるが、基本は利害に基づいて動く動機の方が強いと考えられる。

 11月の中間選挙を前にして、日本に対しても、貿易問題を必要以上に問題視してくる可能性はある。

 中国に対する通商法スーパー301条の適用の次は、日本が標的にされるシナリオもゼロではない。

 トランプ政権が中間選挙までに仕掛けてきそうな行動について、いくつかのシナリオが考えられる。常識的にはあり得ないと感じられても、そうした「まさか」のシナリオは起こり得ると準備しておいた方がよい。

<シナリオ1>日本に対するスーパー301条の適用

 トランプ大統領が貿易赤字を問題視することは知られている。第一の標的が中国だとすれば、第二は日本である。

 中国に対しては、情報通信機器など1300品目を対象に検討を行い、最大600億ドルもの輸入品に25%の高関税をかける構えだ。中国は、すぐに報復関税の発動を表明し、食品など128品目に関税上乗せを行う予定である。

 だが、米国からの強硬な姿勢に対して、中国には「奥の手」がある。巨大な外貨準備として米ドルを保有し、米国債を大量に持っていることだ。中国はそれを売却することを「あらゆる措置」と表現して、米国に譲歩を求めている。強かである。

 もし、日本が米国から厳しい要求を突き付けられたとき、牛肉や農作物に報復関税を課すると強く対抗できるだろうか。それは難しいということで、日本がトランプ大統領や強硬派のスタッフたちに弱腰姿勢を見せれば、遠慮のない「日本バッシング」にさらされる恐れがある。

<シナリオ2>円高誘導

 トランプ大統領の頭の中は、1980年代の日米摩擦のイメージが今も残っている。

 当時は、貿易摩擦を是正するために、為替レートの調整が用いられた。象徴的なのは「ドル高是正」を掲げたプラザ合意だった。1990年代も、クリントン政権(第1期)が円高誘導を振りかざしてきた。

 米韓FTAの再交渉でも、韓国の隠密介入を透明化して、自国に有利なウォン安誘導を禁ずることが盛り込まれた。ムニューシン財務長官も1月にドル安を歓迎する発言をしている。

 ドル安誘導は、ドル高を維持し世界各国から資金を集めてきたこの20年間の米国の戦略や感覚から見れば「非常識な行為」である。米国に資金還流しにくくなり、米国債を海外投資家が買い控えることで、金利上昇が促される。

 FRB(米国準備制度理事会)に対しては、金融緩和圧力が高まり、物価上昇圧力が放置されることになるだろう。そうなると、パウエル議長と大統領の関係も悪化する。物価上昇やFRBの信認低下は、ともにドル安に拍車をかける。

 ドル安政策は、米国にとっても悪魔的な影響を及ぼすだろう。

米朝首脳会談、不調で終われば
円高、さらに進む恐れ

<シナリオ3>米朝会談が不調に終わった時には…

 シナリオ1と2は、トランプ大統領が意図的に進めることを想定していた。これらとは別に、トランプ大統領が想定していない悪いシナリオもあることを理解しておかねばならない。

 それは、北朝鮮と米国の首脳会談が不調に終わったときに起こるシナリオだ。

 筆者が注目するのはドル円レートの推移である(図表)。

 3月8日に流れたトランプ大統領が金正恩委員長と首脳会談を行うというニュースは、ドル高円安の材料となるはずだった。しかし、ドル円レートは予想に反して円安方向には戻らなかった。

 一般的には首脳会談の先行きには慎重な見方が根強いので、ドルの買い戻しの圧力もそれほど大きくないと見られている。為替レートは、潜在的リスクが高いときにはリスク回避の円高となる傾向はいまだに続いている。

 その半面、ドル円レートは、米朝首脳会談が不調だったときのリスクを十分に織り込んでいるとは思えない。

 筆者は、米朝会談が不調になった場合はさらに円高が進むのではないかと見ている。

 3月26日から金正恩委員長は北京を訪問した。一時、北朝鮮は、米国の経済制裁に協力する中国に強い不快感を示してきた。それが一転して中国に再接近したのである。

 これは、スーパー301条を適用して崩れ始めた米中関係に対して、北朝鮮が中国に接近するチャンスと見たからだろう。見方によっては、5月の米朝首脳会談が不調だったときの保険をかけたようにも思える。

 仮に、トランプ大統領が5月に金委員長との話し合いのテーブルを蹴って北朝鮮への強硬姿勢に戻ったとき、中国は以前のように米国の経済制裁には協力しないだろう。そうなれば経済制裁で北朝鮮を追い詰めることはできなくなる。

 そのことを先読みして、北朝鮮は中国との関係改善に動き始めたようだ。

 この状況は、コインの裏表のようにトランプ大統領には苦境を意味する。

 これは日本にとっても苦境である。

 最悪のシナリオとしての北朝鮮への軍事介入に近づくことになる。中国抜きの経済制裁は、実効性が低いので、軍事介入による強硬策を採らないで解決しようとする選択を米国がする可能性は少なくなる。

 その場合は、さらに円高が進むことを覚悟しなくてはいけない。

過度の米国頼りは失敗する
米国以外と貿易連携拡大を

  日本はどうすべきか。

 トランプ大統領の強硬策は、結局は米国の孤立を招く。米国は、他国からの協力が得られず、外交パワーが著しく低下するだろう。

 日本にとっては、米国との間で外交・経済面で過度にパワーを頼りにした戦略が失敗するリスクが高まる。

 相対的に外交・経済面で影響力を強めるのは中国である。

 日本にとっての、ひとつの対応策は、貿易連携で、米国以外のネットワークを強めることだ。

 TPP11や日欧EPAを早期に発効して、その輪の内側に米国以外の国々をなるべく多く取り込むことだ。日本は、新しい貿易・投資ルールをつくる役割を率先して担い、自由貿易のリーダー役になることだ。

 別の対応としては、トランプ後の米国が自由貿易のグループに戻る準備を進めることだ。

 中間選挙で共和党が敗北すれば、トランプ政権は力を落とす。さらにトランプ大統領の弾劾という事態もあり得る。大統領の弾劾手続きは、下院で過半数、上院で3分の2以上の賛成があると罷免となる。

 現時点ではあり得ないと思えても、その「まさか」も、今後はあるかもしれない。そうした先の先を読んで、米国の自由貿易の賛成者との協力を下準備しておくことだ。トランプ政権の保護主義的な政策は長く続けられるものではない。

(第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト 熊野英生)

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら



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