気になる「トランプ・シュリンク」。向う先はインフレか、反インフレか? – 投信1

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皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで調査グループ長を務めます柏原延行です。

日本では、4月に入学、入社される方が多いこともあり、なんとなく華やいだ時期のように思います(東京では桜も咲き始めました)。我が社でも、幾名かの新入社員が入社し、新しい感性を持つ人達とお会いし、お話しする機会があることを、とても楽しみにしています。

我が家はめったに外食はしないのですが、一方でファーストフード的な食べ物を無性に食べたくなるときがあります。私の中では、幼少のころ父親があるファーストフードのシェークを会社帰りに買ってきてくれた時に、なんと美味しい食べ物があるのかと感動した記憶がいまでも鮮明です。それもあり、外国の食べ物に対する憧れをいまでも引きずっているのかもしれません。



オレンジチキンが美味しいアメリカン中華のお店や大好物のチリ(挽き肉料理です)が楽しめるハンバーガー・チェーンなど、好きな料理は沢山あるのですが、その中の筆頭はタコスです。

タコス(料理・撮影:筆者)

有名なタコスのチェーン店で楽しむこともできるのですが、スーパーで良く見かけるタコスのためのセットと比較的安価な挽き肉を中心とした材料を買ってきて、自宅で作りながらたらふく食べると楽しい気分になります。特に、新鮮なレモンジュースから作るマルガリータ(Margarita、できればグラスのふちに塩を付けたスノースタイル)との組み合わせはラテン的な陽気な気分にさせてくれます(どのような音楽が合うかは、いまだ良く分かりません、メキシコの音楽ですよね?)。

さて、3月中旬に2.6%超まで上昇した米国の長期金利(10年国債金利)は、足元では2.4%程度まで(金利)低下し、落ち着きを見せ始めています。そこで、今回のコラムでは、金利に大きな影響を与えるこれまでの反インフレ的(デフレ的)な状況が転換する可能性を改めて検討したいと考えます。

足元の米国、欧州(ユーロ圏)、日本、中国の消費者物価指数を確認すると、総合指数では上昇しているものの、エネルギーや食品を除いた指数(国によって異なるのですが、通常コアなどと呼ばれます)では、いまだ明確な上昇は認められないように思います(図表1)。

図表1:各国の消費者物価指数動向(前年比)

出所:データストリームおよびブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成

「総合的な物価指数」と「エネルギーや食品を除いた物価指数」のどちらを重視すべきかについては、神学的な論争があるように思います。

「総合的な物価指数」を重視される方は、消費者などが感じる実際の物価であることを考慮するのでしょうし、一方で、「エネルギーや食品を除いた物価指数」を重視される方は、たとえばエネルギーでは産油国の減産合意の順守動向、食品では天候要因など外部的な要因に総合的な指数は左右される面があり、基調としての物価を考えるうえでは、この指数が適していると考えるのでしょう。

私自身は、 「エネルギーや食品を除いた物価指数」を重視すべきと考えており、この物価指標を見るかぎり、インフレの存在を確認できないものの、将来のインフレへの懸念が確実に高まっていると考えることが素直だと思っています。そして、このインフレ懸念には、トランプ政権が採用する可能性のある財政拡張的な政策や保護主義的な政策(例:関税→輸入物価の上昇)があることは間違いないように思います。

それでは、オバマケアの代替法案の取り下げから一部で懸念されているように(財源が小さくなる効果があります)、仮にトランプ政権の今後の政策(減税、財政)が小ぶりなものに留まった場合(トランプ・シュリンクと呼ばれることがあるようです)、インフレ懸念は持続するのでしょうか、あるいは再び反インフレ的な基調に後戻りしてしまうのでしょうか。

この点が、ここ1~2年程度の経済・投資環境を考えるうえでのポイントのひとつになると思われます。

結論としては、インフレ懸念はある程度持続すると、私は考えています。この理由としては、①中国のデフレの発信源として機能が弱まること、②企業の合併、事業統合が進展していること、③中央銀行の独立性に対する懸念の3点を挙げたいと考えます。

まず、従来中国は低位な労働コストを生かして、安価な財(商品など)を輸出することで、世界にデフレ的影響を与えたとの考え方があります。しかし、安い労働力を生かした世界の工場としての地位は揺らぎ始めており、このことはデフレ的影響が弱まる要因となります。中国より労働コストが安い国はいくつも存在するため、そのような国に工場が移転することで商品価格を安く維持できるとの考え方もあるのですが、中国ほどの労働人口を抱え世界の大きな工場としての機能を果たす地域・国を見つけることは容易ではないと考えます。

次に、企業の合併、事業統合が進展していることです。たとえば、我が国では10年程度前を振り返ってみると、多くの国産携帯電話メーカーがありました。しかし、我が国の携帯(含むスマホ)の供給メーカーは明らかに減少しています。本来、企業の合併や統合は反競争的な性質があり(独占禁止法の対象となることもあります)、価格の上昇圧力、すなわちインフレ的要因として働きます。(交渉は成立しなかったものの)米食品大手のクラフト・ハインツによる食品・日用品の英蘭ユニリーバの買収提案(金額は約16兆円と報道されました)は企業の巨大化、企業の価格支配力の着実な進展を示唆するものと私には思えます。

最後に、中央銀行の独立性への懸念です。紙幣は紙にすぎません。これを皆が信頼して利用できる理由は、かつては米ドルは金に交換できるという金本位性のシステムにありました。しかし、ニクソン・ショックにより金本位制は破棄されました。その後、通貨の価値を守ってきたのは、選挙の洗礼を受ける政治家が拡張的な財政を行う局面でも、物価の安定すなわち通貨価値の維持を第一の目標として働く組織、すなわち中央銀行が、政府とは独立して機能するとの仕組みであったと私は考えています。しかし、反インフレ的(デフレ的)状況からの離脱を目指して、政府と中央銀行の協調性が従来より高まっていると思われます( 2018年2月に任期終了をむかえるイエレン議長の後任は重要です)。

このように、インフレに関する懸念材料は、トランプ政権の政策以外にも多数存在し、仮にトランプ・シュリンクがあったとしても、ある程度インフレ懸念は継続すると考えています。

ただし、インフレは必ずしも景気が良くなることを意味するものではありません。すなわち、急激な物価上昇が発生した場合、家計は将来への不安から消費を抑制し、この結果、GDPの大きな要素である個人消費が落ち込むことが想像でき、不景気、高いインフレとの状況(スタグフレーション)に陥る可能性もあることに留意が必要です。

消費者としては、いつもでも安価で美味しいファーストフードが食べられるといいのですが。

(2017年3月31日 9:00執筆)

柏原 延行



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