安保を理由に鉄鋼輸入を抑えれば問題だ – 日本経済新聞

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 トランプ米政権は自国の安全保障を脅かしているという理由で鉄鋼の輸入制限措置を検討する方針だという。

 薄い根拠をもとに貿易に介入するような措置を取れば、ルールに基づく世界の自由な通商体制に甚大な悪影響を及ぼす。政権が危うい一歩を踏み出さないよう内外から圧力をかける必要がある。

 トランプ大統領は就任以来、貿易赤字削減を大きな目標に掲げ、その一環として鉄鋼など製品輸入の抑制策を検討してきた。

 そこで目をつけたのが50年以上前にできた米通商拡大法の232条だ。米商務省が安全保障に悪影響を及ぼすと判断すれば、大統領が輸入を制限できるという内容だ。これに基づき、大統領は4月に鉄鋼輸入の安保への影響を調査するよう商務省に指示していた。

 商務省は鉄鋼輸入に安全保障上の問題があると判断し、具体的な制限措置を取るよう大統領に提案する見通しだ。

 しかし、こうした判断は納得できない。

 そもそも米国でも鉄鋼輸入が安全保障上の障害になるとの見方は少ない。米国の鉄鋼消費に占める輸入の比率は3割程度にとどまる。主要な調達先もカナダ、韓国、メキシコなど友好国が大宗を占める。国防上必要な鉄鋼が供給できなくなる事態は中期的に見ても想定できない。

 また、米国はこれまでも、安値の対米輸出で国内産業が被害を受けているという理由で鉄鋼の輸入品にひんぱんに反ダンピング(不当廉売)関税をかけてきた。これによって国内鉄鋼産業は保護を受けた形になっており、鉄鋼製品の国内価格は本来の姿に比べて高くなっているとの指摘もある。

 反ダンピング関税に加えて、安保を理由に鉄鋼輸入が制限されるようなことになれば、海外の輸出メーカーが大きな損害をこうむるのはもちろんだが、鉄鋼を使って製品をつくっている米国内の企業や消費者にも悪影響が及ぶ。

 もし正当な理由がないまま、一方的に輸入が制限されれば、明白な保護主義的措置といわざるをえない。報復措置を招き、貿易戦争につながる恐れもある。

 鉄鋼については、中国の過剰設備問題など対処すべき課題があるのは確かだ。これは多国間対話などで解決すべきものだ。高関税の脅しや一方的な措置で成果を得ようとするやり方は間違っている。





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