韓国景気が一段と減速 経済「司令塔」の高官更迭 – 日本経済新聞

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【ソウル=鈴木壮太郎】韓国の経済政策が一段と迷走してきた。主要経済指標が軒並み悪化。雇用も増えない。景気の減速感がさらに強まる。2017年5月に就任した文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「所得主導の成長」と呼ぶ分配重視の政策は軌道に乗らない。文氏は9日、経済政策の司令塔の役割を果たしてきた高官2人を更迭。景気のテコ入れに力を注ぐ姿勢を鮮明にした。

更迭が決まったのは金東兗(キム・ドンヨン)経済副首相兼企画財政相と、張夏成(チャン・ハソン)大統領府政策室長。それぞれ政府と大統領府の経済政策の責任者だったが、成長に軸足を置く経済官僚出身の金氏と学者出身で分配重視の張氏はかねて対立。文政権は来年度予算の成立を待ち、年内に更迭するとの見方がくすぶっていた。

決定打は金氏の7日の国会答弁だったとの見方がある。「経済が危機との見方には同意しない。経済に関する『政治的な意思決定』の危機」と、政権批判とも受け取れる発言をした。このため文氏が事態の早期収拾を迫られたというわけだ。

文氏は金東兗氏の後任に洪楠基(ホン・ナムギ)国務調整室長を内定した。経済官僚出身。人事聴聞会を経て就任する。張氏の後任には金秀顕(キム・スヒョン)大統領府社会首席秘書官が9日付で就いた。不動産問題の専門家で、政策ブレーンとして文氏に近い。革新色が強く、雇用創出や賃上げで所得を増やし景気を上向かせる「所得主導の成長」を継承する。

この看板政策を続ける意思を改めて示した文氏だが、分配重視の経済政策が成功しているとは言いがたいのが現状だ。

景気低迷の一因は1月に実施した最低賃金の大幅引き上げだ。前年比で16.4%も引き上げたためコンビニ加盟店や食堂などの自営業者による「雇い止め」が続出。6月までほぼ10万人台で推移してきた就業者の伸びは7、8月、2カ月連続で1万人を下回った。雇用の悪化は堅調だった消費にも影響を及ぼす。

主力産業の国際競争力の低下も影を落とす。韓国統計庁によると、9月の鉱工業生産指数(2015年=100、速報値)は99.8と前年同月比で8.4%下落。現代自動車の販売不振や韓国GMの工場閉鎖による自動車生産の減少が響いた。

設備投資にも急ブレーキがかかる。9月の設備投資指数(10年=100、速報値)は前年同月より19.3%低下。サムスン電子、SKハイニックスの半導体メモリー投資が一巡したためだ。

韓国銀行(中央銀行)は10月、18年の実質経済成長率の見通しを0.2ポイント引き下げ、2.7%に下方修正。19年も横ばいと予想する。2.8~2.9%とみる16~20年の潜在成長率を下回るが「大きく逸脱してはいない」と指摘。一部での景気後退局面入りの観測を否定する。一方、政府系シンクタンクの韓国開発研究院は19年の成長率を2.6%と予想。「景気はピークを越え下振れリスクが強まった」とみる。

今後のリスクはトランプ米政権の管理貿易志向だ。9月に署名し、19年1月の発効をめざす米韓自由貿易協定(FTA)改定では自動車分野で譲歩を迫られた。米自動車メーカーが米国の安全基準そのままで韓国で販売できる台数は現行の2倍に増え、米国がピックアップトラックに課す25%の関税撤廃も旧協定の21年から41年に延びる。

米国車の人気が低く、ピックアップトラックの対米輸出もない現状ではFTA改定の打撃は限られるかもしれない。だが、トランプ政権が検討する自動車への追加関税は新たな脅威になる。文氏は9月、トランプ氏に韓国車の適用除外を求めたが可能性は残っている。

危機感を強める経済界は政府に規制緩和を要請。文政権は企業に歩み寄る姿勢もみせている。だが、大幅な軌道修正は支持基盤である労働組合などの反発を招きかねず、難しいバランスを迫られているのが実情だ。





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