IFRS16対応は“脱・表計算ソフト管理”の好機? システム対応すべき4つのポイント – ITmedia

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PhotoプロシップのIFRS推進室で室長を務める巽俊介氏

 2019年1月から適用される「IFRS16新リース会計基準」。借手リースは原則全てオンバランス化されることから、IFRS導入企業が増えている日本でも実務に与える影響が大きく、先行している企業では1年以上かけてその準備を進めている。

 対応にあたっては、従来、経費処理されていたオペレーティングリース契約のオンバランス化が必要になり、全社規模での情報収集業務が必須。加えて、経理/会計業務の負荷も確実に増えることから、日本基準と比べて仕訳起票は約3倍、決算開示項目は約2倍以上になると見込まれている。

 「その結果、内部統制の不備や人的ミスなどを原因に、適切な会計処理を危ぶむ声も少なくない」――。こう指摘するのは、プロシップのIFRS推進室で室長を務める巽俊介氏だ。

対応に向けた具体的なシステム変更点は

 IFRS16対応にあたって“鍵”を握るのが、経理/会計にまつわる各種情報の共有と処理の基盤となるシステム側の対応である。この準備に万全を期すことで、内部統制の漏れを未然に防ぐことができ、これまで表計算ソフトを使って人手で処理してきた数多くのオペレーティングリースの厳格な管理が可能となるわけだ。

 IFRS16で見直し対象となるシステム範囲は幅広く、中でもポイントとなるのが以下の4点である。

(1)不動産リースも管理対象に

 経理/会計パッケージは、OA機器や什器、自動車といった動産リースの管理機能を標準で備えているが、IFRS16で新たに管理対象に含まれる不動産リースの管理機能は対象外となっているか、追加モジュールでの対応にとどまるのが一般的だ。

 件数が少なければ、不動産リースを動産リースに置き換えて管理することもできるだろうが、不動産には1契約に複数科目での支払や敷金に代表される保証金など、動産にはない管理項目が少なからず存在し、小売店や物流会社など、不動産リースの物件を数多く所有する企業ほど管理の煩雑さは増大する。また監査人との合意により、社宅をリース不動産に含める場合も同様だ。

 この手間を削減し、ミスを防止するためにも、不動産リースの管理機能を追加するのが対応への近道だ。

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(2)「複数基準対応」と「仕訳連携」

 IFRS基準の適用後も、国内では日本基準が引き続き利用される。そこで、二重入力の手間とミスを避けるためにも、同一入力をベースに、両基準に準拠した帳簿の作成や管理を可能とする機能の実装が不可欠だ。追加すべき機能は、「両基準ごとのリース料や割引率、リース期間などの情報の保持」「帳簿ごとの勘定科目の設定と仕訳作成」「リース契約書に記載のないIFRS16で必要な項目の登録」などだ。

 会計処理の最終的な成果物の1つが連結財務諸表である。その作成には、両帳簿の仕訳を連携させるために日本基準の仕訳を打ち消す、「赤黒仕訳」の生成も必要となる。

 また 日本基準とIFRS基準の双方とも基準書に会計処理の明記がされており、登録したリース契約が「オンバランスの対象かどうか」「免除規定による短期リースや少額資産の特定」などの判断が必要であり、作業効率化とミス防止の観点から、判定処理における自動化の仕組みも併せてシステムに組み込むべきである。

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(3)リースの料金や期間変更時の「再測定」

 IFRS16で新たに義務付けられたのが、リース期間中に料金や期間が変更された場合に帳簿価格を再計算するための、リース負債と使用権資産の「再測定」である。

 処理のポイントは、変更時までの資産と債務の帳簿価額は変更せずに、変更後の影響額は将来にわたり費用処理することだ。そのために必要になるのが、「変更時点における変更後のリース料総額やリース期間に応じた割引計算」「使用する割引率の再設定」「変更日から残存期間までの償却期間と利息計算」「生じた差額による帳簿価格の修正」の4つの機能だ。

 日本基準に再測定の概念が存在しないことから、現状では日本製パッケージの多くが再測定機能を実装しておらず、海外製パッケージでも本機能は標準実装されずアドオンによる対応を実施しているケースがほとんどだ。しかし、リース期間内の契約見直しは、賃料改定や商業ビルの大規模リニューアル時などでしばしば発生することから、事前に入念な検討をした上で必要となる機能の有無を検討すべきだと巽氏は指摘する。

(4)「増加する開示資料」への対応

開示に必要な項目として、まずファイナンスとオペレーティングリースの区分が廃止され、開示対象として建物賃借契約などの不動産に関するリース取引も含めた全てのリース契約の開示が必要となる。

また、短期と少額資産リースなどのオフバランス化される免除規定も対象となるため、通常動産リースの場合はリース会社より同種の情報提供がなされるケースが想定されるが、リース会社とのやりとり以外のリース契約がある場合は、いかにそれら契約の開示情報を集めるかが検討のポイントとなる。

更に定性分析の開示項目として将来にわたっての返済金額も開示していく必要がある。

上記により、システム登録されたデータに対しては、開示資料として利用できるデータの抽出機能も必須となる。

リース契約管理のための“現実解”

 IFRS16対応は、どの企業にとっても初めての経験であり、対応の過程では思わぬ課題に直面する可能性も少なくない。巽氏は、「期日までに確実に対応を終えるには、余裕を持った作業が何より大切。当社は市場に先駆けて『IFRS16新リース対応版』をリリースし、既に複数のシステム化のプロジェクトを進めている。

 またProPlusの採用によって、ワンストップでのシステム対応が実現するだけでなく、運用フェーズで必要な機能を利用できる点も見逃せない。

 IFRS16の適用後、企業にはリース契約の継続的な管理が求められるわけだが、そこで大きな論点となっているのが、「どの部門がその主体的な役割を担うか」だ。

 手法としては、本社経理が行う「集中管理」と、現場に任せる「分散管理」の2つが考えられる。しかし前者は、管理件数の急増が見込まれる中、本社経理の人材も限られることから、作業リソース確保の点で不安視されている。

 また後者でも、契約書に記載がされていないが、IFRS上では必要となる会計データを現場に判断してもらって登録することは難しく、少なからず登録ミスの発生が予見されている。

 それに対するProPlusの“解”が、現場展開を想定した業務フローに基づく、企業の実情に合わせた集中管理と分散管理の適切な組み合わせだ。ProPlusによるリース資産管理は、「契約登録」「IFRS項目追加」「自動判定」「資産計上」の各フェーズに沿って行われ、顧客の実態に合わせたシステム登録フローの構築が可能である。

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IFRS16の影響額試算業務も支援

 プロシップでは、IFRS16の影響額を試算する段階から支援する用意があり、2016年5月から「影響額試算ツール」を提供している。これは、今後見込まれる「全社レベルでのインパクト分析」「マネジメント層への報告と監査法人との折衝」「初年度対応時の帳簿価格算出」などの業務を支援するツールであり、既に20社以上の提供実績があるという。

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今後の展望

 IFRS16は2019年から適用開始となるが、前述の通り業務及びシステムに与える影響が大きく、特に従来はリース会社から送られてくる注記の基礎情報をもとに開示しているケースにおいては、現行の業務プロセスの変更も必要になることから十分な準備期間が必要であると考えられる。

 一方でリース資産管理のパッケージソフトを導入さえすれば事足りるという簡単なものではなく、自社の業務上のニーズを正しく把握し、要求仕様を纏め、投資コストに見合う選択を行うことが必要である。最後に今回のIFRS16の適用に伴い、日本基準との違いが一層大きくなるため、これまでのコンバージェンスの流れからも将来的に日本基準の改正も想定される。よってIFRSにとどまらず、将来的な日本基準への対応も視野に入れた上で慎重かつ適切な選択が求められる。


 次回はグローバルでのIFRS16対応の取り組み方について解説する。




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