連載・社会保険未加入の行方(1) – 日刊建設通信新聞 (会員登録)

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【未加入排除拡大 追随二の足/元請け優先順位 除々に低下/下請け「進むも引くも地獄」】
 国土交通省直轄で、4月1日以降に入札契約手続きを行う工事から、社会保険未加入企業の排除をこれまでの1次下請けから2次以下まで拡大させるとともに、社保未加入企業が下請工事を受注した場合には、制裁金を課す新たな取り組みが始まった。関係省庁と建設業界団体が一体となって「社保未加入対策」に取り組んで5年。ただ、先頭を切って取り組む国交省を横目に、大半の自治体は施策の追随に二の足を踏む。社保未加入対応を国交省に強く詰め寄ったはずの専門工事業界もいま、足並みがそろわない。社保未加入対策をめぐって、何がいま起きているのか。 「応援単価に対して4月以降どうするのか。組合見解はあるのか」
 国交省直轄工事で社会保険未加入排除拡大が始まる3日前の3月29日。東京都鉄筋業協同組合(東鉄協、館岡正一理事長)が開いた定例会で加盟企業から質問が飛んだ。
 「応援単価」とは自社もしくはグループ内の職人が、他社の仕事を手伝う1日当たりの費用。社保加入促進の動きが始まったはるか以前から専門工事業界で行われてきた一般的な商慣習で、社保加入分は入っていない。4月から2次下請け以下まで拡大して社保未加入企業を排除するのだから、応援単価も社保加入分を上乗せするべきというのが質問の趣旨だった。
 しかし館岡理事長の回答は、「そもそも組合で統一価格を決めることはできない。今後も組合が動くつもりはない」と断言。仕事量減少に伴って再びダンピング(過度な安値受注)に突入し始めた危機的状況の打開へ、共同歩調で応援単価を数千円引き上げるという淡い期待は一瞬でついえた。鉄筋工事業は、これまで専門工事業界の中で先頭を切って社保加入を進め、法定福利費別枠計上実現のかぎを握る標準見積書活用についても、いち早くモデルを作成し取引先のうち大手ゼネコンを中心に社保加入支払いを実現してきた。
 しかし、社保加入取り組みの優等生だった鉄筋工事業、鉄筋工事業と作業が隣り合わせの型枠大工はいま、社保加入問題だけでなく自らの企業存続をかけた選択を迫られている。躯体2職種にとって行政・元請・下請が一体となった社保加入推進や担い手3法改正のほか安倍政権発足に伴う建設市場の回復基調は追い風だった。
 潮目が変わったのは、建設投資額が前年度から6兆円程度増加し50兆円台の大台まで6年ぶりに回復した2013年度当たりから。資機材や労務費上昇を理由にした建設コストアップを回避するため、発注者が構造変更に踏み切るケースが相次いだからだ。その結果、型枠大工や鉄筋工事業が仕事の主戦場にしているRC(鉄筋コンクリート)造建築物が減少、S(鉄骨)造の増加につながった。
 社保加入を進めることで職人の処遇改善と法定福利費別枠計上浸透を目指す専門工事業にとって大きな誤算だったのは、経済産業省がけん引した第4次産業革命といった新たな成長戦略キーワードに、安倍政権だけでなく国交省や建設業界が「生産性向上」を掲げ、それに強く引っ張られ始めたことだった。
 建設業界にとって同時並行で取り組み、進めなければならない「処遇改善(担い手確保・育成)」と「生産性向上」という2つの命題。しかし、国を挙げたIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)、ロボットなどを使った新産業創出と既存産業構造の改革という大きなうねりにいま、建設業界は直面する。このことが、もともと取り組みが遅れていた準大手以下の元請けや加入率が低い専門工種などでさらに、社保未加入対策への関心が薄れることへの危機感につながっている。そもそも、4月から始まった国交省直轄の社保未加入企業排除強化策とはどのようなものなのだろうか。





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