盗人猛々しい「愛国」 – 長周新聞

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 「安倍晋三記念小学校」の名で寄付を募って世間を驚かせた学校法人森友学園(本部・大阪市)の「瑞穂の國記念小學院」(大阪府豊中市)の開校をめぐって、数億円規模の国有地の不正売買疑惑が浮上している。現職首相の名を冠し、首相夫人が名誉校長に就く私立学校の用地として、近畿財務局が国有地をタダ同然で払い下げ、国交省、文科省や大阪府も絡んで、「学校建設」を隠れ蓑に国有財産を無償譲渡していたという疑いである。ネット上では話題になっているものの、商業マスコミは一部を除いてまったく報じないことにも、この疑惑の背後に大きな政治的力が関与していることを感じさせている。いったい何が起きているのか。明らかになっている事実から経緯をまとめた。

 大阪「森友学園」を巡る問題

 森友学園は、大阪市淀川区に本部を置き、大阪市内で塚本幼稚園(創立1950年)、肇國高等森友学園保育園(同1971年)を運営する私立の学校法人である。園児に毎朝、「教育勅語」や「五箇条の御誓文」(明治天皇が発した新政府の基本方針)を暗唱させたり、君が代の斉唱をさせるほか、「海ゆかば」「日の丸行進曲」などの軍歌を歌わせる「愛国教育」をやることで知られ、幼稚園長と新設小学校の「総裁・校長」を兼任する籠池泰典理事長は、改憲運動を展開する政治組織「日本会議大阪」の運営委員でもある。
 学園のホームページでは、「教育の要」として「天皇国日本を再認識。皇室を尊ぶ。伊勢神宮・天照大御神外八百万神を通して日本人の原心(神ながらの心)、日本の国柄(神ながらの道)を感じる」「愛国心の醸成。国家観を確立」「教育勅語素読・解釈による日本人精神の育成(全教科の要)。道徳心を育て、教養人を育成」するとし、「日本人としての礼節を尊び、愛国心を育てる」ことを謳っている。
 幼稚園では、年1回の伊勢神宮への参拝・宿泊研修で「日本人としての意識」を高め、護国神社で「同期の桜を歌う会」を開き、「自衛隊及び自衛権への敬意と感謝」として自衛隊の海軍慰霊祭や各種式典に参加して軍歌を披露し、ソマリア沖の海上自衛隊に「慰問ビデオ」を送ったり、「警察官の方々へのエール」などもおこなっているとPRしている。教諭にも自衛隊へ体験入隊させ、「国旗掲揚や甲板掃除、カヌーなども体験」させているという。
 ネット上では、運動会で「日本を悪者にする中国や韓国は心を改めて」「安倍首相頑張れ!」と園児に選手宣誓させている動画や、あからさまな人種差別教育について問いただした在日韓国人の保護者に対して副園長(理事長夫人)が「韓国人と中国人は嫌いです。お母さんも日本に嫁がれたのなら日本精神を継承なされるべきです。(中略)勝手なことをいいなさんな!! 腹が立ってしかたありません」と書き殴った手紙が保護者によって公開されている。
 朝鮮人や中国人への蔑視は徹底しているようで、昨年12月には、保護者宛に「よこしまな考え方を持った在日韓国人や支那人」と記載した文書を配布していたことも保護者からの情報提供で発覚し、府職員が事情を聴取した。
 これらの問題がネット上で話題になると、籠池園長は、ホームページに「専門機関による調査の結果、投稿者は、巧妙に潜り込んだ韓国・中国人等の元不良保護者であることがわかりました」「日本精神をとりもどすためにも日本に在住する極めて少数派の韓国・中国の人たちのこういった行為に対して、断固として立ち向かう」との文書を掲載。その後、韓国を「K国」、中国を「C国」と改めたが、府からの是正指導を受けて「外国人に対して誤解を招く表現であり、おわびする」との文書を載せた。
 また園では、これまでに平沼赳夫(日本会議国会議員懇談会会長)、西村真悟(元防衛政務次官)、百田尚樹、曾野綾子、櫻井よしこをはじめ、昨年、政治資金私的流用が問題になり公選法違反の疑いで逮捕された田母神俊雄(元航空幕僚長)が「国防理念なき日本民族の将来」、中山成彬(元文科相、元国交相)が「日教組の影と功罪」と題して講演するなど、「保守」「右派」を自称する面面による保護者向けの教育講演会を定期的におこなっている。
 演者らは「論語の教え、教育勅語の尊い精神は、ありがたい“心の力”」(西村真悟)、「真に日本人づくりの教育が実施されている」(田母神)と推薦の言葉を寄せている。
 昨年10月には、稲田防衛大臣が籠池理事長に対して「永年にわたり防衛基盤の育成と自衛隊員の士気高揚に貢献されるもの大なる」として感謝状を贈るなど、自民党系の政治団体や政府閣僚までがこぞって関与を公にしているのも特徴だ。

 「神国日本」唱える学校 自民党議員らが絶賛

 森友学園は、大阪府豊中市野田町に「日本で初めてで唯一の神道の小学校」を設立し、今年4月の開校を目指している。
 学校敷地内に神社を造り、「五箇条の御誓文・教育勅語全文と十二の徳目・歴史と伝統に基づいた教育」を柱に、「天皇国日本を再認識」「愛国心の醸成」「国家観の確立」「日本精神の高揚」などを掲げている。
 当初は「安倍晋三記念小学校」と銘打って1口1万円の寄付を募り、振込用紙には「2口以上のご寄付をお願い致します。なお、ご寄付を賜りました方には、安倍晋三記念小学校の寄付者銘板にお名前を刻印し、顕彰させていただきます」と記していた。その後、校名を「瑞穂の國記念小學院」としたが、名誉校長には安倍昭恵・総理大臣夫人が就任している。
 折しも、18歳選挙権によって学校における「主権者教育」が叫ばれ、自民党は「“子供たちを戦場に送るな”と主張し中立性を逸脱した先生方がいる」として密告サイトを立ち上げてまで「中立性」に目を光らせる一方で、このような学校を首相夫人みずから「広告塔」となって設立するというダブルスタンダードである。
 大阪府内に307ある私立幼稚園の定員に対する充足率は1園あたりおよそ74%だが、森友学園が運営する塚本幼稚園(158人)は充足率50%にとどまっており、順位では上から260位。保育園経営としては厳しいことがうかがえる。新設小学校に卒園者を囲い込む意図も感じさせている。

 9億5000万円が無償に 不可解な国有地売買

 問題になっているのは、森友学園が新設する小学校用地としての国有地取得をめぐる不可解な取引経緯だ。
 学園が新設小学校を建設中の豊中市の国有地(8770平方㍍)は、1974年に伊丹空港に離発着する航空機の騒音対策として大阪航空局(国交省)が住民の移転補償で買いとった土地で、騒音区域が順次解除されるなかでまとまった土地に生まれ変わった。
 2013年に航空局が近畿財務局に売却手続きを依頼し、同年9月に森友学園が小学校用地として取得に動いた。学園に支払い能力がないため、当初は「10年間の定期借地」として契約したが、2016年6月20日、急きょ「売却」となった。
 ところが財務局は、公開が原則である国有地の売却額を「学園側から要請があった」ことを理由に非公表とした。それを問題視した豊中市の市議会議員が今年2月8日に開示を求めて大阪地裁に提訴。一部マスコミもとりあげて話題性を帯びるなかで2日後、一転して近畿財務局は価格を公表した。
 売却価格は1億3400万円。だが、事前に近畿財務局が査定を依頼した不動産鑑定士は、同地を9億5600万円と評価しており、およそ86%の減免となる。財務局は用地内の「地下埋設物(廃材及び生活ごみ)の撤去・処理費用(約8億1900万円)を控除した金額」と説明した。
 同地にはかつて住宅地があり、航空局が調査したところ地下にはビニール片、陶片、ガラスや材木片、コンクリートガラなどが埋まり、一部はヒ素、鉛などによる土壌汚染が確認されたという。控除額8億1900万円の算出根拠については「1万2200立方㍍の残土を搬出して、1万1100立方㍍の土で埋める」としている。国会では「およそ4000台のダンプカーが行き来しなければ説明は付かない。実際に撤去したのを確認したのか?」との野党議員の質問に対し、財務省理財局長は「確認した」とは答えていない。実際にかかった費用も明らかにされていない。
 さらにさかのぼる昨年三月には、森友学園からの申し出を受け、大阪航空局が地下3㍍までのゴミの撤去・土壌の除染費用として1億3176万円を学園側に支払っていたことも発覚。また、撤去作業が長引いた場合の保障として300万円を支払う契約も存在し、控除額の8億1900万円とあわせると「支払い免除額」は9億5300万円を超える。これは財務局が示した売却予定額の9億5600万円と符合しており、森友学園はタダ同然で国有地を取得したことになる。
 国交省は別途、校舎建設補助金として6194万円を拠出している。
 また、森友学園が取得した国有地については、6年前に別の学校法人が校舎用地として取得を希望し、路線価を参考にして8億円前後での買いとりを求めていたという。この学校法人がゼネコンに依頼して見積もったゴミ撤去費用は「2・5億円」で、それを差し引いた5億8000万円での購入を申し出たが、財務局から「価格が低い」と指摘を受けて断念した事実を『朝日新聞』が報じている。
 しかも、隣接する国有地(9492平方㍍)は、7年前に豊中市に14億2300万円で売却されており、同じく土壌汚染が確認されているが、市は除染のため別途資金をつぎ込んで盛り土をしている。土地代が86%も控除された形跡はみられない。同じ条件の国有地が売却先によって14億円もの差が出るというのは異常といわざるを得ないもので、背後で大きな不正がおこなわれたと見なされる由縁だ。
 売買契約が結ばれる前年の2015年2月10日の国有財産近畿地方審議会では、財務局は森友学園の「学校経営が安定するまでの10年間」は「事業用定期借地」として貸し付けることを提案しており、8年後をめどに買いとる「売買予約」をして学園が土地を占有した。原則「売り払い」の国有地を借地にするのも異例だが、その後の1年間で上記の「ゴミ問題」を理由に土地代9億5000万円がほぼ全額減免されて実質無償となり、学園側が「買いとり」を申し出るというあまりにも不可解な展開となっている。
 そもそも土地を一括購入できず、評価額の10分の1以下にまで引き下げられた売却額1億3400万円ですら10年間の分割払い(金利わずか1%)を申し出ている森友学園が、8億円をこえるゴミ撤去費用を業者に支払うことができたのかも疑問となっている。
 これら8億円の減額査定も含めた売却経緯について、その後におこなわれた国有財産近畿地方審議会にはまったく報告されていない。適正さを判断する諮問機関の検証もないまま8億円もの値引きがおこなわれていたことになる。

 土地持たぬ学校を認可 大阪府や文科省関与

 さらに問題視されているのは、公共性や社会的な責任が求められる新設小学校の設置認可において、文科省や大阪府まで異例の優遇措置をとっていたことだ。
 学校の新設にあたっては、土地・校舎などを整備できる資金力がなければ認可されない基準になっている。学校運営には公金がつぎ込まれるうえに、途中で経営破たんしたり、必要な設備が整わない場合、生徒の教育や保護者らにもとり返しの付かない影響を及ぼすためだ。
 2014年12月の大阪府私学審議会議事録によれば、大阪府は森友学園について、文科省の会計基準で新たに校舎を建てるさいに用意するよう求めている基本金は「ゼロ」(13年度)と報告している。ところが、そのわずか1カ月後の2015年1月2日には「工事請負契約の締結・寄附金の受入・カリキュラム・出願状況等を報告」することを附帯条件として「認可適当」と答申。これを受けて文科省も認可している。これは豊中市の国有地売買が近畿地方審議会に図られる半年も前のことで、学校の所在地すら確定していない段階である。現在でも10年間で土地代が払えず不履行になった場合は「更地に戻し、同額で国が買い戻す」条件がつくほどの不安定さを残しており、確実に学校運営を保障できる財産が積み上がっているとはいえない。
 認可した文科省の下村博文大臣(当時)は、森友学園理事長が大阪役員をつとめる日本会議の国会議員懇話会副会長でもある。認可権者である大阪府の松井一郎知事は、同じく改憲を主張する大阪維新の会代表だ。どのような力が働いて学校新設を認めるに至ったのかも疑問点となっている。
 弁護士らで構成する自由法曹団は15日、学校の建設現場を視察した後の記者会見で、「現地ではすでに基礎にコンクリートが打たれ、堅固な校舎が建てられている。支払いが不履行になった場合は、国が買い戻すことが抵当権に書いてあるが、ここまで造られた建物が撤去できるのか。その場合、生徒はどうなるのか。できてしまった段階で、原状回復して国に返すことができるのかという疑問がある。これほど財政基盤が脆弱な法人に学校新設の認可を出すことは通常では考えられない。さらに、売却額も決まらず、支払い能力の有無も不確定のまま国有地の占有だけが承認されたことが大問題だ」と指摘している。
 安倍首相は国会答弁で「私や妻は一切関わっていない! もし関わっていたら間違いなく、首相も国会議員も辞任する!」と反論したが、名誉校長に就任している安倍昭恵夫人を筆頭に土地を所有していた国交省、タダ同然で払い下げた財務省、さらに基準を逸脱して不明瞭な論議で学校設置を認可した文科省、大阪府など多くの省庁や部署が関与して何をしたのか曖昧に済ませるわけにはいかない。
 「愛国」を掲げながら、国有財産を私物化するというような行為は許されない。しかも、子どもの義務教育に責任を負う学校を媒体としており、これらの疑惑が事実なら盗人猛猛しい「愛国」ビジネスといわなければならない。社会的責任において疑惑は追及されなければならない。

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