エボラブルアジア、積極M&Aで事業拡大 – 日本経済新聞

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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

 インターネットで航空券や旅行ツアー商品を販売するエボラブルアジアが順調に業績を伸ばしている。2016年3月に東証マザーズに上場、17年3月には東証1部へ市場変更した。積極的なM&A(合併・買収)と新事業への参入が急成長の背景にある。本業の旅行事業の利益水準が高まれば安定感が増しそうだ。

吉村社長(中央)はIPOで事業のスピード感が上がったと話す

吉村社長(中央)はIPOで事業のスピード感が上がったと話す

 「航空券はエアトリ」――。割安価格を連呼するこのCMは、エボラブルアジアのネット旅行サイトの広告で、お笑い芸人のオリエンタルラジオを起用したことで話題となった。吉村英毅社長は「まだエアトリの知名度は高くない。かなり広告費に投資している」と明かす。

 同社は2007年の設立時から、複数のネット航空券販売サイトを運営していた。16年11月にエアトリをはじめ、複数のサイトを統合して使いやすい総合プラットフォームを目指した。現在は国内・海外航空券、ツアー、ホテル、新幹線、レンタカーなどを一括で比較し購入できる網羅性が大きな特徴となっている。

 5月にはDeNAの子会社のDeNAトラベルを12億円で買収。「サイトの総合力が高まった」(吉村社長)という。従来のエアトリは国内航空券に強みを持つ一方、DeNAトラベルは海外航空券や海外ツアーの種類が豊富で、効果的な補完関係が成り立つ。

 また、DeNAトラベルの17年度の旅行取扱高は555億円で国内14位。エアトリは403億円で20位相当だったが、統合によって9位に届く額になった。ネット旅行会社では「楽天トラベル」や「じゃらん」に次ぐ。

 M&Aを事業拡大の起爆剤とするのは今回が初めてではない。16年には高級ホテル予約サイト運営のらくだ倶楽部を買収し、高級ホテルの掲載数を増やしている。17年にはメールマガジン運営最大手のまぐまぐを取り込み、メルマガ読者向けに旅行情報を発信できるようにした。

 M&Aを得意とするのは、実は投資事業にノウハウがあるためだ。現在40程度のベンチャー企業などに投資し、経営サポートなども行っている。投資先の一社である着物レンタルの和心は3月、東証マザーズへ上場を果たした。投資事業は好調で、収益分をエアトリの広告費にも充てている。

 ベトナムにエンジニア約1000人を抱えるIT(情報技術)オフショア事業を展開しているのもエボラブルアジアの特徴だ。旅行サイトだけでなく、IT企業のゲーム開発などを担い、最近でNTTドコモなど大手企業からシステム開発を受託するようになった。

 1000人規模の組織は、東南アジアに拠点を置く日系オフショア企業で最大手。インドや中国資本の競合がひしめく中、「エンジニア数を増やし数年内に東南アジア最大手を目指したい」(吉村社長)と野心的だ。

 18年9月期の連結業績は売上高が110億円、営業利益は15億円の見通し。国際会計基準(IFRS)に移行するため単純比較はできないが、実質的な増収増益を見込む。吉村社長は「IPOを経て資金調達などがしやすくなり、ビジネスのスピード感が上がった」とし、今後もM&Aと新事業による業容拡大に前向きな姿勢をみせる。

 死角はないのか。足元でもっとも利益を出しているのは投資事業で、本業の旅行事業は広告費の先行投資により収益力が落ちている。将来を見据えた戦略だが、投資家からは「旅行事業でもう少し利益を出してほしい」との声も上がる。

 そのためには、本業の拡大も急ぐ必要がある。17年度の国内線航空券の市場は約1.5兆円だが、エアトリが占める割合は3%程度。ネット旅行会社では、世界最大手の米エクスペディアや中国のネット旅行最大手の携程旅行網(シートリップ)などが日本人顧客へのアプローチを進める。

 エアトリを直接検索して何度も利用するリピーターはまだ少ない。吉村社長も認めるように、まだ高いとは言えない知名度が課題であり、地道なマーケティング活動を続ける必要がありそうだ。

(長尾里穂)

[日経産業新聞 2018年9月21日付]

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