「百貨店離れ」誤算の連鎖 三越伊勢丹HD社長交代 – 日本経済新聞

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 三越伊勢丹ホールディングス(HD)は7日、大西洋社長(61)が退任し、後任の社長として杉江俊彦取締役専務執行役員(56)が4月1日付で昇格する人事を正式発表した。同社は主力の百貨店事業が振るわないため、2017年3月期の純利益が前期比で半減する見通し。業績悪化の責任を取って大西氏は任期途中で辞任する。

三越伊勢丹HDの社長就任が決まった杉江俊彦取締役専務執行役員
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三越伊勢丹HDの社長就任が決まった杉江俊彦取締役専務執行役員

 同日午前に開いた取締役会で大西社長の辞任などを決議した。大西氏は社長退任後も6月下旬の株主総会までは取締役にとどまる。石塚邦雄会長(67)は4月以降も会長を続け、株主総会後に退任する。

 三越伊勢丹HDが発足したのは2008年。少子高齢化と消費者の購買行動の変化を背景に、百貨店業界はすでに冬の時代を迎えていた。全国の百貨店売上高はバブル期のピークだった1991年には9兆7130億円に達したが、08年には7兆3813億円とほぼ4分の3に減少。老舗の三越なども苦境に立たされていた。

 両社の統合はブランド発掘や商品力に定評のある伊勢丹のノウハウを生かし、数多くの富裕層の顧客や東京・銀座や日本橋などの一等地の店舗を抱えながらも低迷する三越の収益力を磨くのが狙いだった。

 だが統合からの約9年間では必ずしも狙い通りにならなかった。10年には三越銀座店を大幅増床したほか、11年にはJR大阪駅の駅ビルに出店。「伊勢丹流」の店舗づくりで三越の売り場に活気を取り戻そうとした。しかし大阪では販売不振が続き、わずか4年後の15年には店名の看板を下ろし、売り場の縮小に追い込まれるなど誤算が続いた。

 背景には、この間に消費者の購買行動の変化が一段と進んできたことがある。象徴的なのが、流行を取り入れた衣料品を低価格で販売する「ファストファッション」の台頭とインターネット通販の成長だ。百貨店の強みだった多品種少量の商品の品ぞろえだけでは、集客力を保てなくなってきた。

 例えば、三越伊勢丹HDが発足した2008年に日本に上陸し、東京・銀座に初出店したスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)。日本での店舗数は66店舗に拡大し、地域売上高は2016年に46億スウェーデンクローナ(約580億円)と前年比23%伸びた。ファーストリテイリングが展開する「ユニクロ」も東京ミッドタウンなど都心の一等地に大型店を構え、流行に合わせやすい衣料品などの品ぞろえを拡充してきた。

 インターネット通販では、スマートフォン(スマホ)の普及と歩調を合わせて、スタートトゥデイが運営する「ゾゾタウン」などが存在感を増す。経済産業省のまとめによると、衣類や服飾雑貨などの電子商取引(EC)の市場規模は2015年に1兆3839億円にまで拡大した。

 百貨店業界の冬の時代はアベノミクスによる高額消費の回復とインバウンド客の「爆買い」で、いったんは止まったかにみえた。しかし、円安・株高の追い風が一服すると、寒風が再び吹いた。全国の百貨店売上高は2016年には36年ぶりに6兆円を割り込み、5兆9780億円と91年のピークの5分の3に減った。三越伊勢丹HDでも、旗艦店の伊勢丹新宿本店(東京・新宿)の不振が目立つ。

 三越伊勢丹HDも不採算店舗の閉鎖や事業の多角化などにかじを切りはじめた。20日には三越の千葉店(千葉市)と多摩センター店(東京都多摩市)を閉鎖するほか、松山店(松山市)など4店の事業転換や縮小を検討する見通しだ。

 次期社長となる杉江氏は1983年に伊勢丹に入社。現在は経営戦略本部長を務める。三越伊勢丹HDは新しい経営体制のもとで百貨店事業の苦境を脱し、10年越しの統合効果を出すことができるのか。百貨店業界を取り巻く環境が厳しさを増すなか、新経営陣の抱える課題は大きい。(富田美緒)

 杉江 俊彦氏(すぎえ・としひこ) 1983年(昭58年)伊勢丹入社、2009年執行役員。11年三越伊勢丹執行役員。16年三越伊勢丹ホールディングス取締役専務執行役員

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