日本株が世界で最も危険か 日本だけが続ける大規模な量的緩和政策 – livedoor

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一時的な株安で止まるかどうか(写真:F3al2/iStock)

10月10日のアメリカ株式市場の大暴落をきっかけに、世界同時株安が起こった。10日のダウ工業株30種平均は前日比831ドル安に達し、日本株も日経平均株価で同915円安となった。中国や台湾もそれぞれ前日から5〜6%と大きく下落した。

翌11日も、アメリカ株は545ドルの下落となり2日連続の下げとなった。これで2日連続の世界同時株安になるかと懸念されたものの、中国の上海市場が1%近い上昇を見せ、日経平均株価も103円80銭の上昇。英国など欧州株は下落したものの、ダウ工業株は3日連続の大幅下落を避けて287ドル高で終わった。

とはいえ、世界の株式市場をリードするニューヨーク市場が2日間で約1400ドル近い下げとなり、今後の株式市場の行く末に大きな不安を残した形だ。とりわけ今回の世界同時株安で心配されているのは、その本当の原因がよくわからないことだ。

ニューヨーク市場の暴落は、今年に入ってすでに3回目。800ドルを超える下落といっても歴代80位程度の下落にすぎない。今年に入ってからのアメリカ株下落の原因は、恐怖指数と呼ばれるVIX指数が急騰した2月の暴落をはじめとして、中央銀行に当たる「FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)」による金利引き上げが原因だったと分析されている。

今回も米国債の金利上昇が引き金のひとつであったことは事実だが、はっきりしたことはよくわからない。その分析によっては大きな相場変動の前兆と見なければならない。絶好調のアメリカ経済だが、その先行きはあまり楽観視できないのかもしれない。

金利上昇、貿易戦争それとも過剰流動性の終焉か?

今回の世界同時株安の原因を何と見るかによって、株式市場の今後の動向は大きく変わってくる。現在分析されているさまざまな株価下落要因をピックアップしてみると、大きく5つあると筆者は考えている。

1. 米国債の利回り急騰、金利上昇

数多くの専門家が指摘する金利上昇への警戒感だが、ベンチマークである米国債の10年物の利回りが一定のラインを超えれば、投資家の資金はリスクのある株式市場から離れて債券市場にシフトするため、株式市場は下落すると見られている。実際、このところの米国債利回りは10月5日に3.23%に達するなど急上昇を見せた。10月10日までの10年物米国債の利回り上昇は、予想外に急激なものだったと言える。

とはいえ、過去の金利上昇と株価の動きを見てみると、実際にはもっと高いレベルの金利上昇が株価暴落のシグナルになっている。クレディ・スイスが調べた過去54年間の米国債利回り上昇と株価の関係では、「株式市場のリターンの転換点は米国債10年物の利回りが5%に達した時点」と分析されている。

実際に、ITバブルが崩壊した2000年の米国債利回りは6%を超えていたし、リーマンショック前の2007年でも5%を超えている。下落率が史上最大だったブラックマンデー(1987年10月19日)の利回りは10.25%だった。

FRBが、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で示した今後の金利引上げの目安によると、年内1回、2019年に3回、2020年に1回の計5回としている。このフォワードガイダンス(中央銀行が示す今後の金融政策の指針)どおりに実行されれば、米国債の利回りは2020年には3.4%に達するとみられている。

言い換えれば、今回の暴落を金利上昇のせいとするのはちょっと早計のような気もする。米国債の利回りが5%に達するにはまだ時間がかかりそうだ。

とはいえ、 世界の中央銀行はこの10年、限りなくゼロに近い低金利と非伝統的な量的緩和を繰り返してきた。そうした背景を考えると、10年物米国債の利回りは3.5%がターニングポイントだとする考え方が市場ではコンセンサスになりつつある。

2. 貿易戦争への懸念

アメリカのトランプ政権最強の経済政策は、言うまでもなく世界中に仕掛けた貿易戦争と言っていいだろう。とりわけ、中国への強硬な姿勢が目立つ。この貿易戦争の将来を悲観して今回、株価が下落したとすれば、つねに強気の姿勢が目立つ株式市場の対応としてはちょっと違和感がある。ゴルディロックス(適温相場)が続くのを嫌がる投資家は少ないはずだ。

株価さえ上がればみんながハッピーな適温相場では、貿易戦争が悲惨な結果をもたらすことはわかっていても、 実際にその影響がファンダメンタルズとして表れてこないかぎり、投資家が株を売るとは考えにくい。貿易戦争の行く末が見えない中で、株価暴落は説明がつかない、ということだ。

量的緩和政策のツケをそろそろ支払わなければいけない

3. 過剰流動性=量的緩和、巻き戻しヘの警告

いま世界の投資家が最も心配しているのが、この過剰流動性の問題だろう。2008年のリーマンショック以降、景気後退からの脱出法として世界中の中央銀行がそろって金利を引き下げ、莫大な金額の量的緩和政策を実施した。この10年間の量的緩和政策のツケをそろそろ支払わなければいけない時期にきているわけだが、金融緩和のツケの大きさにマーケットが気づき始めたと言っていい。

とりわけ、FRBが昨年10月から始めている「バランスシート縮小」は、ここにきて徐々に株式市場に影響を及ぼしつつある。中央銀行のバランスシート縮小は、金利上昇に拍車をかける。FRBは、バランスシート縮小の規模は明らかにしていないが、今後もバランスシート縮小は続くはずだ。

過剰流動性は、新興国のドル建て債務となって経済成長の重しになっている。世界全体の債務(借金)はいまや164兆ドル(IMF調べ、1京8500兆円)に達しており、これらのマネーは株式市場やドル建て債務となって市場に流通してきた。

株式市場にとって、過剰流動性は株価を押し上げるが、いったんマネーの流れが逆流して流動性が細くなると、株式市場は暴落し、新興国のドル建て債務はデフォルト(債務不履行)に陥ることになる。最近のFRBのバランスシート縮小などによってドル不足が指摘されているが、今回の世界同時株安はこうした過剰流動性の逆流に対する警告なのかもしれない。

ちなみに、トランプ政権が推奨したアメリカ企業の海外滞留資産をアメリカ国内に還流させる動きもピークを越えたと言われている。2018年だけで4000億〜5000億ドル還流されると見込まれていたが、すでに上半期だけで3300億ドルの還流が済んでいるそうだ。しかも、還流金の大半は債務返済に消えたと言われる。過剰流動性の巻き戻しは、徐々にだが確実に世界中で進んでいるわけだ。

4. 過剰なインデックス投資への懸念

ここにきてアメリカの投資信託市場およびETF(上場投資信託)市場に異変が起きていることがクローズアップされている。モーニングスターによれば、アメリカの投資信託およびETFへの純資産流入額は、2018年1〜9月のデータで、前年同期の5172億ドルから2817億ドルに減少。ざっと46%のマイナスになったそうだ。要するに、ファンドやETFに資金が入ってこなくなってきていることになる。

特に注目されているのが「指数」に連動するように設定されているインデックスファンド、そして指数に連動するように組成されているETFなど、年金運用などでよく使われる「パッシブ運用型」商品への新規の資金流入が大きく減っていることだ。2018年1〜9月の純資金流入額は3294億ドルで、前年同期比35%も減少している。インデックスファンドやETFに投資資金が入ってこなくなったということだ。

現在の株式市場の売買高ランキングでは、ETFがつねに上位を占めている。ETFが買われれば、そのまま株式や原油、金といった投資対象の市場価格も上昇するということだ。相場全体が大きく買われる。

近年の金融市場が好調に推移したのも、数多くの投資家がETFに資金を投入したことと大きなかかわりがあると言われる。そのETFに資金が入ってこなくなれば、市場全体が下落することになる。場合によっては、インデックスファンドやETFに売りが殺到してマーケットそのものがストップしてしまう可能性もある。

とりわけ日本のように、中央銀行である日本銀行がETFに大量の資金を投入して、株式市場全体をカサ上げするような政策をとっている市場では大暴落どころかマーケットの凍結もありうる。

5. ヘッジファンドによる利益確定

長年、金融市場に携わっている人間であれば、この10月中旬の株価暴落のきっかけが何であるかはすぐにピンとくるはずだ。莫大な資金を投入することで知られるヘッジファンドの多くが11月末を決算日として設定している。

ヘッジファンドの場合、解約を申し込んでから決済まで45日間程度かかるため、投資家が11月の決済日に利益確定をしたいと思えば、この10月15日までに売り注文を出す必要がある。ブラックマンデーにしても、株価暴落に10月が多いのはヘッジファンドの11月期決算と少なからず関係があるからだ。

むろん、ヘッジファンドの利益確定だけでここまで大きく下がることはないのだが、ヘッジファンドの中にはプログラム売買をしているファンドが多い。株価などが一定のレベルを超えた瞬間に、一斉に売りが膨らむことが多い。ヘッジファンドなどリスクを取って投資するマネーは、どうしてもマーケットのボラティリティ(変動幅)を増幅させる。10月に暴落が多い原因のひとつと言われる。

中間選挙、どちらが勝っても株価は下落する? 

さて、問題は今後の展開だが可能性は無限にある。とりあえず、ここで下げ止まるとしてもさまざまなリスクが顕在化していることがわかった以上、これまでのように一本調子での上昇は難しいと考えたほうがいいかもしれない。

とりわけ、今回の株価暴落の原因をすべてFRBに押し付けようとするアメリカのドナルド・トランプ大統領の発言やツイッターは、今後の市場にも少なからず影響を与えるはずだ。日本と違って、アメリカの中央銀行は独立性の高い組織であるため、金利はきちんと上昇していくはずだ。

株式市場に限らず金融市場全体が「リスクオン」だった状態は、しばらくの間「リスクオフ」になることは避けられないだろう。これまで金融マーケットは、過剰流動性が莫大なリスク資産を吸収してきた。その「リスク資産バブル」がここにきて崩壊をはじめていると考えたほうがいいだろう。

株式市場に限らずインデックスファンドやETFを含めたリスク商品は今後ズルズルと売られていく可能性が高いかもしれない。未来のことは誰にもわからないが、投資家の多くが下落に備える方向に転換しつつあると考えたほうがいい。

とはいえ、株式市場が売り一色になるとは考えにくい。

現在の世界経済は、第4次産業革命とも言われるイノベーションの大きな波の中にいる。フィンテックや仮想通貨、人工知能にロボテック、自動運転技術にドローンといった技術革新が次々に起こっている。

こうしたイノベーションの世界を、バブルという言葉で片付けてしまうのはやや乱暴すぎる。アマゾンやアップル、グーグルといったITを代表する銘柄はやや買われすぎだが、それに付随しているほかの銘柄もすべて買われすぎていると思うのは早計だ。

むろん、いいことだけではない。米中貿易戦争も、中国はどこまでトランプ大統領に付き合うのかはわからないが、25%の貿易関税をこのまま受け入れて行くとは到底思えない。人民元安がどこまで進むのかわからないが、トランプ大統領、習近平会談の行方によっては株式市場にも影響を与えるかもしれない。

さらにもう1つの懸念材料が「新興国通貨」だ。今回の世界同時株安ではドルが売られて、安全資産と言われる円やスイスフランが買われるという場面が見られなかった。金価格の高騰にもつながらなかった。要するに、リスク資産の代わりに為替やコモディティへの逃避が表面化していないわけだ。

その一方で、トルコリラやアルゼンチンペソといった財務の弱い通貨は売られている。このあたりの分析をきちんと行わないと新興国のリスクをきちんと読めないのかもしれない。新興国にはどうしてもアメリカの金利上昇による資本流出のリスクがある。

いずれにしても、アメリカの中間選挙で共和党が勝っても、民主党が勝っても、どのみち株価がこれまでのように一直線に上昇していくとは考えにくいということだ。

日本株が世界で最もハイリスク?

最後に、日本株の動向についてだが、周知のように日本の株式市場はほとんど外国人投資家によって支配されているために、今回のような株価暴落には当然ながら連動することになる。アメリカ株が上がれば日本株も上がり、アメリカ株が下がれば日本株も売られる。

ただし最も心配なのは、日本だけがいまだに大規模な量的緩和政策を続けていることだ。ウォールストリートジャーナルに「アベノミクスの巻き戻し、影響は数世代に」という記事が出て話題になっている。

国債市場の5割近くを中央銀行が保有し、株式市場もETFを介して株価を支えてきた。加えて、日銀、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、共済年金、ゆうちょ銀行、かんぽ生命といった「五頭のクジラ」と呼ばれる公的に近い資金を使って、株式市場を支えてきた。

言い方を換えれば、日本株は当面下がってもそれを支えてくれる中央銀行や公的資金があるかぎり、短期的な下落で済み、結局いつまで経っても「適正な株価」というのは反映されない。

その代わり中央銀行や公的資金に株価を支えるだけの力がなくなった時に、株式市場は予想を超える下落をすることになる。その現実に世界のメディアも気づき始めた、と言っていいのかもしれない。





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