「平成30年7月豪雨」が大きく影響…2018年7月景気ウォッチャー調査の実情をさぐる – Yahoo!ニュース 個人

Home » 02景気 » 「平成30年7月豪雨」が大きく影響…2018年7月景気ウォッチャー調査の実情をさぐる – Yahoo!ニュース 個人
02景気, 景気動向指数 コメントはまだありません



・現状判断DI(※)は前回月比マイナス1.5ポイントの46.6。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス1.0ポイントの49.0。

・「平成30年7月豪雨」の影響が多方面で見受けられる。今回の発表では特別に別途解説のレポートが出されるほど。

現状は下落、先行きも下落

内閣府は2018年8月8日付で2018年7月時点における景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」(※)の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で下落、先行き判断DIも下落した。結果報告書によると基調判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、『平成30年7月豪雨』によるマインド面の下押しもあり、引き続き一服感がみられる。先行きについては、人手不足、コストの上昇、『平成30年7月豪雨』の影響などに対する懸念もある一方、引き続き受注、設備投資などへの期待がみられる」と示された。

2018年7月分の調査結果をまとめると次の通り。

・現状判断DIは前回月比マイナス1.5ポイントの46.6。

 →原数値(季節調整が行われていない素の値)では「よくなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは47.5。

 →詳細項目は「小売関連」「製造業」以外が下落。「サービス関連」のマイナス6.9ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「雇用関連」。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス1.0ポイントの49.0。

 →原数値では「よくなる」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「ややよくなる」「変わらない」が減少。原数値DIは49.0。

 →詳細項目では「飲食関連」「雇用関連」以外が下落。「住宅関連」のマイナス2.6ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は「雇用関連」。

ここ数年の間に起きた大きな変動要因としては、2016年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)が記憶に新しいが、その影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ原油価格動向をはじめとする海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念はある。また消費税率の引き上げに関連する形での消費減退の懸念も、消費動向に影響を与えてきそう。さらに今回月では「平成30年7月豪雨」と命名された、西日本を中心に生じた豪雨による被害が大きな影響を及ぼす形となっている。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。昨今ではやや低迷、ぬるま湯的な軟調さと表現できる動きにあるのが気になるところ。「平成30年7月豪雨」の影響はグラフ上に劇的な、イギリスショックの時のような形で現れるレベルのもので無かったのが幸いではある。

DIの動きの中身

次に、現状・先行きそれぞれのDIについて、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(~2018年7月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の現状判断DI(~2018年7月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月の現状判断DIは総計で前回月から1.5ポイントのマイナス、詳細項目では「小売関連」「製造業」で以外で下落。もっとも大きな下げ幅は「サービス関連」が計上した6.9ポイント、もっとも大きな上げ幅は「製造業」による0.8ポイント。「サービス関連」の下げは「平成30年7月豪雨」によるところが大きい。

景気の先行き判断DIは「飲食関連」「雇用関連」のみが上げ。下げ幅は「住宅関連」の2.6ポイントが最大。

↑ 景気の先行き判断DI(~2018年7月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の先行き判断DI(~2018年7月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月で基準値を超えている詳細項目は「雇用関連」のみ。

猛暑のプラスも「平成30年7月豪雨」が吹き飛ばす

報告書では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状

・記録的な猛暑により、エアコンや冷蔵庫、洗濯機を中心に販売量が激増しており、配達が追い付かなくなっている(家電量販店)。

・異常な暑さにより来客数が減少傾向にある。ここまで暑い日が続くと体調不良を起こす人も少なくないため、外出を控える要因となっている(一般レストラン)。

・平成30年7月豪雨災害による自粛、交通機関の運休によるキャンセルが響いている。また、販売品の仕入れが間に合わないなど、間接的な影響も受けている(観光型ホテル)。

・平成30年7月豪雨以来、交通網の混乱で来客数が減少して売上も大幅に低下している。気温は非常に高く、販売量も増えない(百貨店)。

■先行き

・中国、四国、九州方面への旅行について、復興支援ツアーが増えると見込まれる(旅行代理店)。

・今後3か月の予約状況に変化はないが、「平成30年7月豪雨」の影響で自粛傾向であり、予約の伸びは鈍る。その一方で、延期されている宴席もあるので、それが実施されれば来客数は伸びる(高級レストラン)。

・「平成30年7月豪雨」や猛暑による生鮮品の相場高などの影響が、今後どのように続くのか不安が残る(スーパー)。

・天候に左右されることが多い業種であるが、今回も残暑が長引くと秋物の立ち上がりが遅れてしまうため心配している(衣料品専門店)。

今年は予想通りの猛暑が到来し、足し引きすると経済の観点ではプラスとなりやすいために景況感の観点では期待ができたのだが、「平成30年7月豪雨」がその期待を吹き飛ばす形となってしまった。また、暑さも度が過ぎると外出をひかえるようになり、客足が鈍る業態もあるようだ。

企業関連の景況感では堅調さを示す話がある一方、「平成30年7月豪雨」や酷暑によるマイナスの影響が見受けられる。

■現状

・自動車メーカーの北米向け販売が79か月連続で前年を超えており、カナダ向けも25か月連続で前年超えとなっている(輸送用機械器具製造業)。

・受注量に大きな変化はないが、猛暑で現業パートの出勤率が下がり、人手不足に拍車が掛かっている。募集費、人件費の高騰で収支が大きく悪化している(輸送業)。

■先行き

・円安による原油価格の高止まりがあるなか、「平成30年7月豪雨」によるJR貨物の不通が発生した。JR貨物の不通は順調に推移してきたモーダルシフトの流れが止まる可能性があり、そうなると運転手不足、車両不足に拍車が掛かる恐れがある(輸送業)。

・原料のキャベツやタマネギの価格が、大雨や日照不足による不作の影響から、今後値上がりすることが見込まれるため、景気は悪くなる(食料品製造業)。

原油価格は高止まりの中にあり、燃料費の高騰への懸念の声も見受けられる。他方、「平成30年7月豪雨」で生じた流通網の混乱や、猛暑による不作への懸念だけでなく、従業員の出勤率の低下という想定し難いマイナスの影響の声も確認できる。

雇用関連では人手不足に関わる多様な意見が見受けられる。

■現状

・予定より多くの内定を出したものの、辞退者が続出し、予定数に満たない企業が多い(新聞社)。

■先行き

・求人は高水準を維持しており、人手不足も厳しいが転職市場は活発になる(職業安定所)。

辞退者が多いのは掛け持ちの内定者が、最良の条件以外の内定を辞退してしまうためだろう。それだけ雇用市場が求職者有利な状態にある証に違いない。ほんの数年前までは内定が企業都合で取り消されてしまうという、真逆の事案が少なからずあったことが思い返される。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合致した対価・条件を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計31件、先行き計46件、合わせて77件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好14件、やや良好29件、不変101件、やや悪い15件 悪い11件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでも無いことが統計からはうかがえる。

人手不足を言及するコメントを精査すると、状況の深刻さを受け止めて対応を取る企業もあれば、広告費を現状維持のままにしていたり、賃上げを抑えている、求人活動に消極的との声もあり、果たして企業側の人手不足への危機感はどこまで本心なのか、疑ってしまうものもある。また、条件のよい企業に人材を奪われ、挙句の果てに労働力人口の減少や少子化に責を投げる声もある。

「働き方改革」に関しては現状のコメントで「企業幹部は役所に対して就業時間を減らす努力をうたいつつも、実質は見て見ぬふりで残業を課している、などと否定的な意見が多い」という否定的なものも見受けられるが(事実であれば役所が介入すべき事案ではある)、一方で「働き方改革や時給の上昇など、労働環境に関する報道も、消費者にとっては景気のよさを実感しているようである」「働き方改革に向けた需要が膨らんでいるようで、関連商品に対する問合せが増えている」のような声もある。

今回月では「平成30年7月豪雨」の影響が大きく、現状計173件、先行き計127件、合わせて300件(単に「豪雨」だけなら175件、132件で307件)もの関連コメントが確認できる。そのため内閣府でも別途解説の資料として「景気ウォッチャー調査における『平成30年7月豪雨』の影響」なる3ページのレポートを今回発表分に提示しているほどである。

↑ 景気ウォッチャー調査における「平成30年7月豪雨」の影響(レポートより抜粋)
↑ 景気ウォッチャー調査における「平成30年7月豪雨」の影響(レポートより抜粋)

気象庁の定義では2018年6月28日から7月8日に発生した豪雨を「平成30年7月豪雨」と呼んでいる。今後インフラの被害による輸送量減少の問題、旅行・観光への自粛ムードによる消費マインドの低迷、農作物の値上がりなどが景況感に影響を与えそうだ。

昨今問題視されている、そして報道では否定的に取り上げられることが多い人手不足だが、雇用市場の需給バランスの正常化、そして適切な労働対価が労働力とやり取りされる状態となるための移行プロセスに過ぎないと考えれば、むしろ肯定的に見るべき問題。

現在の社会環境がそのコスト水準を求めており、それに応じたコストの算出ができないのであれば、ビジネスモデルそのものが現状に対応しきれていないか、そろばん勘定の上でどこかゆがみが生じているか、判断を間違っていたまでの話。昔と今とでは環境が異なることを認識すべきには違いない。

■関連記事:

政府への要望の最上位は社会保障、次いで景気対策と高齢社会対策

2016年は2.2人で1人、2065年には? 何人の働き手が高齢者を支えるのかをさぐる

※景気ウォッチャー調査

※DI

内閣府が毎月発表している、毎月月末に調査が行われ、翌月に統計値や各種分析が発表される、日本全体および地域毎の景気動向を的確・迅速に把握するための調査。北海道、東北、北関東、南関東、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の12地域を対象とし、経済活動の動向を敏感に反映する傾向が強い業種などから2050人を選定し、調査の対象としている。分析と解説には主にDI(diffusion index・景気動向指数。3か月前との比較を用いて指数的に計算される。50%が「悪化」「回復」の境目・基準値で、例えば全員が「(3か月前と比べて)回復している」と答えれば100%、全員が「悪化」と答えれば0%となる。本文中に用いられている値は原則として、季節動向の修正が加えられた季節調整済みの値である)が用いられている。現場の声を反映しているため、市場心理・マインドが確認しやすい統計である。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。





コメントを残す