大企業、景況感陰り 円高や人手不足影響 – 毎日新聞

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東京五輪・パラリンピックの会場として整備される有明アリーナの建設現場。五輪関連投資の増加もあり、人手不足感が高まっている=東京都江東区有明で2月6日、柳澤一男撮影



 日銀が2日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業・製造業の景況感が8四半期(2年)ぶりに悪化するなど、景気拡大の持続性に黄色信号が点灯した形となった。円高や原材料価格の上昇、人手不足が収益を圧迫していることに加え、トランプ米政権による保護主義的政策もあり、先行きへの警戒感が強まっている。

 「人件費も物流費も上昇してコストは増すばかり。企業努力だけではどうにもならない」。定食屋を展開する大戸屋ホールディングスの関係者は現状の経営環境について厳しい見方を示した。

 今回の短観では大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス24(前回12月調査はプラス26)となり、2016年3月調査以来の悪化に転じた。大企業・非製造業も6四半期ぶりに悪化した。

 景況感を下押しした要因の一つが、原材料価格の上昇だ。近年の世界的な景気持ち直しによる需要増で、原油や金属、輸入食材などが値上がりした。これに伴うコスト増分を販売価格に転嫁しきれない企業も多く、収益を圧迫。製造業では紙・パルプ、繊維、鉄鋼など素材、加工業種で軒並みDIが悪化。非製造業では宿泊・飲食サービスなどが悪化した。

 18年2月期決算で減収減益を発表した衣料品販売大手「しまむら」の北島常好社長は2日、「うちは生活に密着した商品。同じものなら基本的に安く売る」と強調し、低価格路線を堅持する意向を示した。牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングスの担当者も「どうにか企業努力で(値上げせずに)並盛り350円は死守したい」と語り、値上げによる収益改善は期待しにくい状況だ。

 さらに企業を悩ませているのが、改善の見通しが立たない人手不足だ。短観の人手不足を示す指標は、全企業・全産業でバブル期直後の1991年11月以来の水準となった。特に深刻なのは20年東京五輪・パラリンピック関連で需要が高まる建設業界。人手不足による工事の遅延や人件費の上昇などが響き、建設の景況感は3ポイント悪化した。

 こうした構造的な要因に加え、年明け以降の円高や株価急落による先行き不透明感も影を落とした模様だ。年明け以降、米国の金利上昇が続き、市場が混乱するとの警戒感から株価が大きく下落。リスク回避で比較的安全な資産とされる円が買われ、1ドル=113円台から一時は104円台まで円高が進み、株価も下落した。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「株価の調整を通じて、昨年までの高揚感が後退し、景気の頭打ち感が出ている」と潮目の変化を指摘する。【土屋渓、竹下理子、藤渕志保】

保護主義、先行き不安

 「世界各国で保護主義化などを目指す動きが鮮明になっている。会社を取り巻く環境は楽観できない」。新日鉄住金の進藤孝生社長は2日の入社式で、経済の先行きについて厳しい見方を語った。

 今回の短観の結果について、企業や市場関係者の多くは「DIの水準は全体的に高めで、設備投資も強い」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)などと分析し、直ちに景気が悪化に転じるとの見方は少ない。だが、円高進行や保護主義の台頭などリスク要因を懸念する声が広がっている。

 中でも企業関係者らが警戒しているのが貿易を巡る米中対立の激化だ。米国による輸入制限に対抗する形で中国財政省は2日、米国からの輸入品128品目に最大25%の高関税をかける措置を発動。同日の記者会見で全国銀行協会の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)は「米国の保護主義的な動きや中国との対立深刻化で、先行き不透明感が高まる可能性に注意が必要」と語った。

 国際情勢が不安定化すると、比較的安全とされる円が買われ、円高・ドル安が進む可能性が高まる。円高は企業の海外収益の減少に直結し、トヨタ自動車では対ドルで1円円高が進むと営業利益が年間約400億円減り、日産自動車も同様に150億円の利益が吹き飛ぶ計算だ。ある自動車大手幹部は「円高に振れて収益が落ちれば新技術の開発など投資余力も減る」と強調し、設備投資などへの悪影響を指摘する。今回の短観では、企業の18年度の想定為替レートは1ドル=109円台半ばで、一時は104円台まで進んだ最近の円高を織り込んでおらず、先行きの不安要因だ。

 世界経済をけん引してきた米国経済の先行きを不安視する見方もある。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「昨年後半は、ハリケーン被害からの復興需要やアイフォーン10(テン)需要など特殊要因で高い成長が実現していたが、1~3月は明らかに減速している」と指摘する。昨年末にトランプ米政権が打ち出した大型減税などで財政懸念が高まり、長期金利が上昇しているのも金融市場や企業経営にとって悪材料。河野氏は「19年と見込まれていた米経済の景気後退入りが、18年に前倒しとなる恐れもある」としており、日本経済に悪影響を及ぼすことも予想される。【坂井隆之、竹地広憲】






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