「いざなぎ超えの好景気」でも私たちの実感が薄い理由 – MONEY PLUS

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11月15日に内閣府が公表した今年7~9月期のGDP(国内総生産)速報。GDP成長率は前期比で実質+0.3%(年率+1.4%)と、7四半期連続でプラス成長となりました。茂木敏充経済財政・再生相も同日の記者会見で「景気は緩やかな回復基調が続いているとの認識に変わりはない」と評価しています。

一方で、GDPの速報値が市場予測を若干下回ったことを材料に、日経平均株価は6営業日続落となりました。続落期間としては1年半ぶりの長さとなり、今年最長を記録したことからニュースなどでも取り上げられました。

はたして、足元の景気は好調を維持しているのか、あるいは、勢いが鈍化してきているのか。速報値の中身を読み解くことで、景気の実際の姿を浮かび上がらせたいと思います。


GDP速報とは何なのか

GDP速報はQE(Quarterly Estimates)とも呼ばれていて、わが国の景気や経済全体の動きを表す指標として、公表直後の株価や為替レートの変動要因になることがあります。

内閣府はGDP関連の統計を作成する過程で早期に入手・集計できた計数を使って、推計値としてGDP速報を作成しています。たとえば、個人消費の額は鉱工業指数などの大まかなデータを使って推計しています。また、設備投資額も速報段階では法人企業統計が出そろっていないため、供給側の販売情報から推定するという手法を取っています。

こうした「推計値」の性格上、その後に公表された統計を勘案した改定値になると数字が大幅に変わることがあるため、この「改定値」にも注目が集まります。実際、9月に公表された2017年4〜6月のGDPの改定値は、約1ヵ月前に公表された速報値から年率換算で1.5ポイントも下方修正され、株価下落の要因になりました。

こうした大幅な修正がときどき発生するため、内閣府では速報値の推計手法の見直しも検討されています。それでもGDP速報が注目されるのは、消費支出、住宅、設備投資、在庫投資、輸出入といった経済全体を構成する主要項目の動きをいち早くとらえることができるためです。

ポジティブとはいえない側面も

それでは今回のGDP速報は、どのように読み解けばいいのでしょうか。

全体としては、GDP成長率が前期比で実質+0.3%(年率+1.4%)と、7四半期連続でプラス成長となっています。それだけでなく、2012年12月に始まった今回の景気回復局面(4年10ヵ月)は、「いざなぎ景気」(1965年11月〜1970年7月、4年9ヵ月)を超えて、戦後最長だった「いざなみ景気」(2002年2月〜2008年2月、丸6年)に続く2番目の長さになることが確実となったことでも話題になりました。

ここまでを見ると、茂木大臣のコメントの通り「景気は緩やかな回復基調が続いている」というポジティブな評価で決まりかと思われます。が、個別の項目を見ていくと、そうではない評価も考えられます。

今回のGDP速報で最も注目されたのは、GDP全体の6割近くを占める最大の項目である「民間最終消費支出」です。これは「家計による消費財への支払い」であり、いわゆる個人消費を指しています。

最近では、この民間最終消費支出がプラスで推移することによりGDPのプラス成長を支えてきました。それが今回、7四半期ぶりに減少に転じたことになります。

これは、8月に東日本を中心に記録的な長雨になったことなどの天候不順が背景ともいわれています。ただ、自動車やテレビなどの耐久消費財や外食などのサービス消費も伸び悩んでいたことから、国内民間需要が予想ほど強くなかったとしてネガティブな評価につながり、株価の下落要因になったようです。

一方で、輸出から輸入を引いた純輸出は、海外データセンター向けの半導体需要の拡大などIT輸出関連が好調でした。前期比では0.5%の大幅な増加となり、GDP全体のプラス成長の要因となりました。

雇用者報酬が伸びる意外な理由

GDP速報には、このほかにも注目すべき統計が含まれています。それが「GDPデフレーター」と「雇用者報酬」です。

GDPデフレーターは物価の動向を表す指標で、政府がデフレの状況を把握する際に重視していて、日本銀行の金融政策にも影響を与える重要なものです。今回は前期比で+0.3%となり、3四半期ぶりの上昇となりました。

一方、雇用者報酬は実質で前年比1.6%の伸びとなっていますが、2016年度中の2%台の伸びからは鈍化しています。加えて、伸びの主因が雇用者数の増加となっていて、1人当たりの賃金の伸びが小幅にとどまっています。こうしたことが、私たちに「景気が良い」という実感が乏しい状況につながっているのかもしれません。

今回公表されたGDP速報は、12月8日に改定値が公表される予定です。その際に、9月の時のように大幅に改定されるようだと、また株価や為替レートの変動要因になることも予想されます。

なお先行きは、新型iPhone向けの部品供給や自動車輸出などで引き続き輸出が堅調とみられているほか、国内需要も天候不順の影響は一時的なものにとどまり、五輪関連工事や人手不足を背景とした省力化・効率化投資も下支えすると考えられています。そのため、GDP全体としてはプラス成長が続く可能性が高いといわれています。

12月8日に公表される「改定値」に加えて、来年2月14日に公表される10月〜12月のGDP速報では、こうした点に注目してみてはいかがでしょうか。





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