エコノミストとマーケット・エコノミストの違いを考える – 投信1

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02景気, 企業短期経済観測調査(QUICK短観) コメントはまだありません



景気の話をする人は、経済学者、純粋に景気を予想している人(筆者はここに含まれます)、市場を予想するために景気を語っている人、常に破綻シナリオを語り続けている人、に分けられます。

経済学者は理論的に精緻であることを優先して現実を直視しない人が多いので、本稿では詳述せず、「理路整然と景気予測を間違える人々」とだけ記しておきましょう(笑)。破綻シナリオ論者については、別の機会に詳述します。

そこで今回は、純粋に景気を予想している人(エコノミストと呼ばれることが多いようです)と、市場を予想するために景気を語っている人(マーケット・エコノミストと呼ばれることが多いですが、エコノミストと自称する場合も多いので、注意が必要です)について記すことにしましょう。



エコノミストは幅広い指標をじっくり見る

エコノミストの目的は、景気そのものを予想することです。時間軸としては、半年後から数年後を中心に予想します。

主な情報提供先は材料の仕入れを増やそうか否かを考えている企業、設備投資をすべきか否かを考えている企業、といった ところですが、景気対策の必要性を考える政府、株式の長期投資を考えている投資家なども情報提供先に含まれます。政府が拙稿を読んでくれているか否かは、自信がありませんが(笑)。

彼等は、幅広い経済指標に万遍なく目を通し、景気の全体像を掴もうとします。経済指標は時として振れますから、単月の指標に一喜一憂せず、数カ月分の統計を眺めて景気の大きな流れを把握するように努めます。

為替や株価については、ワケのわからない動きをする上に、景気に影響するので、景気予測を狂わせる撹乱要因だと考えています(笑)。

マーケット・エコノミストは限られた指標に素早く反応する

マーケット・エコノミストの主な情報提供先は、投資家です。投資家たちが自分の投資先を考える際の参考として、マーケット・エコノミストの景気解説を聞くのです。時間軸としては、翌日から数カ月後が中心でしょう。

マーケット・エコノミストは、限られた経済指標等を集中的に解説します。何と言ってもウエイトが大きいのは日米の金融政策で、日銀の政策委員の性格まで熟知している人がいるほどです。経済指標では米国の雇用統計(日本では日銀短観)のウエイトが非常に高くなっています。

株や為替は「美人投票」の世界なので、多くの投資家が注目している点に自分も注目しないと儲けることができません。

たとえば貿易収支に注目して詳しく分析し、貿易収支を予測しても、金融市場が貿易収支の結果を反映して動くのでなければ、無駄な努力です。そんなことなら、多くの投資家が注目している米国の雇用統計に自分も注意を集中し、しっかり分析したり予測したりするほうが良いに決まっています。

今ひとつ、彼等は一喜一憂します。市場は経済指標等に素早く反応しますので、「経済統計は時として振れるので、数カ月分を眺めて大きな流れを把握しよう」などと言っていては、相場の動きに取り残されてしまうからです。

そこで、エコノミストはマーケット・エコノミストのことを「雨が降り始めると洪水を心配し、雨が止むと水不足を心配する人々」と批判し、マーケット・エコノミストはエコノミストを「堤防が決壊して初めて洪水を心配し始める人々」と批判します。部外者からは似たような仕事に見えるでしょうが、両者は仲が悪いのです(笑)。

目的により使い分ける

エコノミストとマーケット・エコノミストは、どちらが正しいとか優れているとかいうことではなく、使う人が目的に応じて使い分ければ良いのです。景気の予測を知りたいのか、市場の予測をしたいのか。前者ならエコノミストの、後者ならマーケット・エコノミストの情報を利用すれば良いのです。

ちなみに、株式投資をする場合は、短期投資なのか長期投資なのかにより、利用すべき情報が異なるので注意が必要です。今日買って明日売ろう、といった短期取引の場合、景気動向といった大きな話よりも、短期的に市場参加者が株式市場に強気なのか弱気なのか、といった「美人投票」が重要ですから、マーケット・エコノミストの情報を重視すべきでしょう。

しかし、数年持っているつもりで株を買うならば、日本や世界の景気がどうなっていくのか、といったエコノミストの情報を重視すべきでしょう。もちろん、数年持っているつもりでも、今日買うべきか明日買うべきかの判断はマーケット・エコノミストの情報を利用するべきですが。

冒頭、マーケット・エコノミストも自分をエコノミストと呼んでいる場合があるので注意が必要だと記しました。どうやって見分ければ良いのでしょうか? 最も簡単なのは、金融政策について詳しく記してあるか否かです。

極端を言えば、エコノミストは金融政策にはほとんど興味を持っていません。「金利が0.25%上がったから、設備投資は手控えよう」などという企業があるとも思われませんし、ましてゼロ金利時代の量的緩和が景気に影響するとも思われませんから。エコノミストにとっての金融政策は、「為替や株価を動かして景気を混乱させる迷惑な材料」でしかないのです(笑)。

なお、本稿は、拙著『経済暴論』の内容の一部をご紹介したものです。

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本稿は、厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承ください。

久留米大学商学部教授 塚崎 公義



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