リーマン10年 新たな危機への警戒を怠るな – 読売新聞

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 ◆G20の協調を取り戻したい◆

 世界経済はひとまず安定を取り戻しているが、多くの火種がくすぶる。新たな危機への警戒を怠ってはならない。

 米証券大手リーマン・ブラザーズが経営破綻したのをきっかけに、未曽有の金融危機に発展した「リーマン・ショック」から15日で丸10年となった。

 世界が、金融システムのもろさと重要性を再認識させられた出来事だったと言えよう。

 ◆ポピュリズムを広げた

 混乱の発端となったのは、米国の低所得者向け住宅ローン「サブプライムローン」である。それらを組み込んだ高リスクの金融商品の価値が、ローンの焦げ付き増加によって暴落した。

 こうした金融商品を大量に保有していた欧米金融機関は、軒並み経営危機に追い込まれた。

 先に経営が悪化した米証券大手ベア・スターンズは、政府主導の再編劇で救済された。

 ところが、リーマンの場合は、「強欲な金融機関を救うのは許さない」とする世論に背中を押されて破綻させた。政策判断のミスと言わざるを得まい。

 世界経済は急減速し、日本も輸出や生産が大きく落ち込んだ。ひとたび金融システムの機能がマヒすれば、実体経済に深刻な打撃を与えるという教訓を残した。

 主要国の政府や中央銀行は、大規模な財政出動や金融緩和に踏み切った。特に中国は、4兆元(当時のレートで約60兆円)の景気対策を打ち出し、世界経済の反転を牽引けんいんした。世界で中国の存在感が増す転換点にもなった。

 先進国と新興国が協調して政策を総動員し、危機の連鎖を食い止めたことは評価できる。

 国際的な金融規制は強化され、銀行の自己資本は大幅に増強された。米国では、高リスク商品への投資に制限を設けた。危機への耐性が増した意義は大きい。

 ただし、リーマン・ショックは社会に深い爪痕を残した。

 公的資金で救われた金融機関の責任が十分問われず、トップが高額の報酬を手にして批判を浴びた。労働者の賃金が伸び悩む一方、株高などで富裕層はさらに潤い、格差は拡大した。

 不満のマグマが、扇動的で排外主義のポピュリズムを広げた。トランプ米政権誕生といった政治の激動を生んだ事実は重い。

 ◆リスクの蓄積に注意を

 いま目を向けるべきは、新たなリスクが蓄積していることだ。

 その一つが、新興国からの資金流出である。対外債務が多いトルコやアルゼンチンの通貨が急落し、インフレが加速している。

 底流には、主要中銀による金融緩和によって世界中にあふれた投機マネーの存在がある。

 経済が再生した米国では、2015年末から利上げ局面に入った。その結果、新興国から米国へのマネー流入が続いている。

 トルコなどは通貨防衛策として利上げしたが、事態が沈静化するかは不透明だ。国際通貨基金(IMF)とも協力し、通貨危機を未然に防がねばならない。

 中国の成長鈍化も不安視される。民間の過剰債務は解消されず、国内総生産(GDP)の2倍を超える。米国の対中制裁関税で中国経済が失速し、倒産する企業が相次ぐ可能性がある。

 米国は、一方的な保護主義政策が、世界の自由貿易体制を揺るがし、新たな危機の引き金になり得ると自覚してもらいたい。

 米経済も楽観できない。好調さを支える大型減税や歳出拡大は財政事情を考えれば、長くは続けられないだろう。家計のローン残高は危機前の水準を超えている。

 トランプ政権が、リーマン後に強化された金融規制の緩和に動き出しているのも心配だ。金融機関が再び高リスクの取引に走らないか、監視を続ける必要がある。

 欧州も英国の欧州連合(EU)離脱問題やイタリアの財政不安などを抱え、予断を許さない。

 ◆政策余地の低下が心配

 日本は戦後2番目の長期成長局面にあるが、回復のペースは緩やかだ。財政赤字は一段と悪化している。日本銀行による金融緩和にもかかわらず、物価は低迷し、金融政策の正常化には程遠い。

 財政・金融とも追加措置の余地は少なく、新たなショックへの備えが十分とは言い難い。経済成長と財政再建の両立を、粘り強く追求していくことが重要となる。

 こうしたリスクに対処するうえで問題なのは、主要20か国・地域(G20)の足並みが乱れていることである。G20はリーマン後のように再び結束を強め、次なる危機に万全の備えを固めたい。





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