リーマン危機10年、リスク再点検を – 日本経済新聞

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 米大手証券会社リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに広がった世界金融危機。それから10年が経過した。この10年で世界経済は回復してきたが、危機の後遺症はあちこちに残っている。金融危機は常に形を変えてやってくる。新たなリスクへの備えは万全だろうか。再点検する契機としたい。

 2008年9月15日のリーマン破綻は国際市場に混乱を招き、多くの国で景気後退をもたらした。危機は「金融」から「経済」「財政」「政治」の4段階で進んだ。

株価は回復、成長鈍く

 リーマン破綻に伴う金融危機に米欧当局は公的資金を使って金融システムの安定を図り、金融機関の再編が進んだ。

 金融危機は実体経済に波及し、世界が同時不況に陥る経済危機に発展した。危機直後、主な先進国と新興国はG20(20カ国・地域)首脳会議で結束して財政・金融両面で景気対策を打ち出した。日米欧先進国の景気が軒並み落ち込むなかで、特に中国は大型の財政出動で需要下支えに動き、世界経済で一段と存在感を高めた。

 各国は対策で1930年代のような大恐慌になるのは回避したが、そのツケともいえる財政危機に多くの国が陥った。それが最も先鋭的にあらわれたのが、ギリシャなどユーロ圏の一部の国だ。

 金融危機の後始末への多額の公的資金投入と経済危機に伴う失業増は、政府への国民の不満を高め、それが政治危機につながった。反移民や保護主義など世界的にグローバル経済への不信や大衆迎合主義が広がっていった。それが米国ではトランプ大統領誕生、英国の欧州連合(EU)離脱投票など政治的混乱の一因になった。

 10年たって世界経済は今、どんな状況になったのだろうか。

 株式市場は危機前の水準を上回っている。世界取引所連盟(WFE)によれば、7月末の世界の株式時価総額は約85兆ドル。危機前で最も高かった07年10月末に比べ35%増、危機後で最低の09年2月末から2.9倍に拡大した。

 足元の経済成長をみれば大半の先進国、新興国は好調だ。米国は09年7月から景気拡大を続けている。日本の景気も12年12月から拡大しているが成長の勢いは鈍い。これは世界共通の課題だ。

 日本総合研究所の調べでは、先進国の実質成長率は危機前(00~07年)は年平均2.3%だった。危機後(10~17年)は1.7%に鈍化、新興国も6.6%から4.9%に鈍った。中国の成長力鈍化、日米欧先進国の潜在成長率低下、賃金・物価上昇の鈍さなど様々な要因が指摘されるが、株価に比べると成長力の回復は弱い。

 10年で世界の金融構造も変わった。一例をあげれば、世界の企業は銀行融資よりも、社債での資金調達を増やした。米マッキンゼー・グローバル・インスティテュートによると、17年末で世界の社債発行残高は11兆7000億ドルと、07年末の2.7倍になった。

 それを支えるのが社債で運用する上場投資信託(ETF)や年金基金などだ。日米欧の金融緩和の長期化で膨らんだマネーは、銀行部門ではなく投資ファンドなどを通じて世界の債券市場に流れこんでいる。そこに新たなひずみがないか、点検が必要だ。

政策対応の余地狭まる

 10年前に比べ世界経済は安定したが、新たな心配の種はある。

 第1はトルコ、アルゼンチンなど一部の新興国の混乱だ。米国の利上げに伴うドル高・新興国通貨安が進み、特に経常収支赤字の新興国通貨が急落している。米国に続いて欧州も金融緩和の出口に向かっている。新興国は国内経済改革を進めると同時に、米欧の中央銀行は国際資金移動への目配りも怠るべきではない。

 第2のリスクは、追加的な政策余力の低下だ。リーマン危機後に各国がとった財政出動や金融緩和など景気対策の後始末は、10年たってもついていない。多くの国で政府債務が積み上がり、先進国で政策金利は危機前の水準に戻っていない。今後の景気悪化局面で、追加的な景気対策をとる余地は小さくなっている。

 第3のリスクは「貿易戦争」に象徴される政策協調の不在だ。

 米国第一主義を掲げるトランプ政権は一方的な関税措置などで脅しをかけながら、貿易相手国に市場開放を迫る。中国は一帯一路構想の名のもとに世界でインフラ建設を進めるが、一部の国は中国から過剰な借り入れで債務問題に苦しんでいる。G20会議も政策調整機能を失っている。

 10年前の危機意識が薄れ、慢心することが一番の心配だ。

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