不動産投資家なら知っておきたい、日本の住宅市場に関する「超」マクロな話 – 健美家株式会社

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01GDP(国内総生産), 実質成長率 コメントはまだありません




今回は、みなさんの主戦場である住宅市場がどのような経緯で現在のような状況にあるのか把握していただければと思い、日本の住宅市場について「 超 」マクロの話をします。いつもよりやや長文です。

まず、日本には、他国には当たり前のようにある「 住宅総量目標 」「 住宅総量目安 」といった目標がありません。

住宅数の全体計画がなければ、今後団塊世代を中心とする人口ボリューム層が徐々に消えていく中で、空き家の大幅増加は必至。

現在820万戸の空き家数が2019年には1,000万戸超へ、2030年には「 空き家ついに2,000万戸へ 」といった文字がメディアを飾るのは、このままいけば時間の問題です。

しかし、そもそもなぜこのようなことになってしまったのでしょうか。ごく簡単に経緯を振り返ります。

■ 戦後の日本に広まった「 新築持ち家信仰 」

日本は第2次世界大戦の敗戦で焼け野原になった後、奇跡的ともいえる経済復興を遂げ、一気に先進国の仲間入りをはたしました。

まずは鉄鋼・石炭などに人・モノ・カネを投入する「 傾斜生産方式 」といった政策で産業復興の糸口を見出しつつ、朝鮮戦争による経済特需を経て、1954年の鳩山内閣あたりから紆余曲折を経ながら、20年ほど続く高度経済成長期に入ります。

1960年には池田内閣が「 10年間で月給が2倍になる 」とした「 所得倍増計画 」を掲げ、年率7.2%の経済成長を想定していましたが、1961年〜70年の実質成長率は10.9%と目標を上回り、国民所得も同程度の伸びを示しました。「 モーレツ! 」といったキャッチコピーのテレビCMが流れていた時代です。

1950〜60年代には仕事を求めて、地方から継続して東京・名古屋・大阪の3大都市圏への急激な人口移動が生じました。地方から都市に出てくる労働力は「 金の卵 」と呼ばれ引っ張りだこに。

やがて、もともと都市部にいた人や地方から出てきた彼らが住宅を購入するようになる頃に創られたのが「 新築持ち家信仰 」です。当時は都市部における住宅が全く足りず、「 造れば飛ぶように売れる 」といった状態。

1966年には深刻な住宅不足を解消するため、「 住宅建設法 」を制定。この法律に基づいて「 住宅建設5か年計画 」が策定され、公営・公庫・公団住宅の建設戸数目標などが位置づけられ、新築住宅の建設が強力に推し進められます。

とりわけ東京など都市部の住宅難は深刻で、国会では「 5年ごとの計画では甘い! もっと住宅を増やせ! 新築を造れ! 」と野党が叫んでいました。

■ 「 景気対策 」に置き換わった住宅政策

日本のGNP( Gross National Product )がアメリカに次いで世界2位に躍り出た1968年には、住宅数が世帯数を上回ります。

住宅数が1.08戸、空き家数が270万戸といった調査結果を受けて「 日本は住宅過剰時代に入った 」「 住宅問題の解決を目的とする理論も政策も、住宅過剰時代に対応できるように改められる必要がある 」との指摘も一部では上がったものの、今度は海外から「 ウサギ小屋 」と揶揄された住宅の「 広さ 」や「 質 」を追求するフェーズに入ります。

そうこうしているうちに85年のプラザ合意を経て日本経済はバブル経済に突入し、90年初頭にはバブル崩壊。このあと住宅政策の目的は主に「 景気対策 」に置き換わります。

バブル崩壊以降の日本はこれまで「 景気を冷やしてはいけない 」という一点を目的とした新築住宅促進政策がこれまで過剰に行われてきました。

前出の住宅建設法はその役割を終えたとして2006年3月に廃止され、その代わりに「 良質な住宅ストック形成 」や「 良好な居住環境 」の形成を目的とした「 住生活基本法 」が同年6月にスタートしますが、この時に住宅の「 量的目標 」がなくなってしまったのです。

■ 誰も住宅の総量を管理していない我が国の現状

昨今ではアベノミクス成功のため、新築住宅購入促進を目的として「 住宅ローン控除 」といった税金還付や「 住まい給付金 」といったバラマキ策、さらには時限立法にも関わらず40年以上続けている「 固定資産税減免 」といった優遇策によって、新築建設促進には更に拍車をかける一方で、空き家を量産しているというのが実態です。

それでも国は今のところ「 住宅数の管理 」を行うつもりはないようです。住生活基本法に基づく「 住生活基本計画 」には、既存住宅流通の市場規模については2013年の4兆円を2025年に8兆円とすること、リフォームの市場規模については2013年の7兆円を2025年に12兆円とすることといったあいまいな目標だけが掲げられ、新築建設や中古住宅流通の具体的な数値目標や全体のバランスがよくわからないのです。

つまり、この国では誰も住宅の総量を管理していない状況なのです。

総務省を中心に各省庁共同で5年ごとに作成されている産業連関表によれば、我が国では新築住宅建設には2倍以上の生産誘発効果( 経済波及効果 )があるとされています。

3,000万円の注文住宅を1棟建てて売れれば、資材や設備等の発注、職人さんなど関係者の給与が生じ、そしてそれらが消費に回るなどして、全体としておよそ6,000万円の経済波及効果があるというわけです。従って、常に景気浮揚策のトップに挙げられ、そのたびに実行されてきたのが新築住宅建設・販売促進策というわけです。

しかし、本当にそれほどの効果があるのかは大いに疑問でしょう。人口減少・世帯数減少局面では、新築が1つ建てられれば、それ以上に空き家が発生しますが、この空き家が放置されれば倒壊や犯罪の温床となるリスクが生まれ、景観として街の価値を毀損します。各自治体で行う空き家対策費も膨大です。

「 空き家対策法 」では、国から各自治体に対し、空き家対策費が計上されますが、こうしたコストはもちろん産業連関表には含まれていません。

人口密度が低下することで上下水道や橋・道路などの修繕やごみ収集といった行政サービスは非効率になるうえ、地価の下落を引き起こすといったマイナスなどを差し引いて考えてみると、新築住宅建設の経済波及効果は、産業連関表が示すように2倍もないどころか、むしろ将来に負債を残している可能性があります。

おそらく新築住宅建設による景気対策とは基本的に新築建設業界にのみ資するもので、日本経済にとってはごく短期的な効果しかないでしょう。それどころか、長期的には大きなマイナスを生んでいる可能性が高いのではないでしょうか。

これはあたかも公共工事でムダな道路を造るのと同じ構図。負債が建設国債ではなく、住宅ローンといった形で個別の家計に集中する分、なおたちが悪いといえます。

一方で、中古住宅流通は個人間取引であるため、取引価格そのものは国内総生産( GDP )にカウントされません。しかし、もし日本の中古住宅が、築年数が経過してもその価値を維持することができていれば、保有資産が多いことで誘発される「 資産効果 」により消費はより活発になっていたはずですし、担保価値上昇によって融資枠が生まれ、投資も相当程度増大していたはずです。

「 個人に資産を持たせることによる資産効果( 内需経済誘発効果 )」が本来、中古住宅市場の活性化には、あるはずなのです。

米国や英国などでは1990年代を通じ株式市場が高騰を続けましたが、2000年には下落トレンドに転じ、2003年まで調整局面にありました。にもかかわらず、中古住宅価格は一貫して上昇を続けたばかりか、上昇率はさらに高まりました。

株価の調整局面当初は、株価下落が消費に与える逆資産効果が懸念されていましたが、このころから住宅の資産効果が株式にとって代わり、経済は好調を続けた可能性が高いようです。

株式保有は高所得層に偏在していますが、住宅は幅広い所得層に保有されていることのメリットが働いた可能性があるのです。もっともこの後、資産バブルに突入し、リーマン・ショックへと続くのですが、行き過ぎればどのような市場でもこうしたことは起こります。

日本の新築住宅市場はもう何十年も、新築住宅建設に対する「 大胆な金融政策 」と「 積極的な財政政策 」がとられていますが、実はとうの昔に、その政策的な意義は失われています。

住宅の「 量の管理 」が行われない市場とは、あたかも砂漠に水を撒くようなもので、都心や都市部の一等立地、都市郊外や地方などのほんの一部の人口偏在地域を除いて、その価値は全体として下げていくしかありません。

さてこうした状況の中で、私たちにできることは何なのか。次回お話しします。





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