ベゾス氏は本当に「現代史上最大の富豪」か – Wall Street Journal

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 アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏の資産が1500億ドル(約16兆6000億円)を超え、ベゾス氏が現代史上、最大の富豪になったとこのほど宣言された。

 しかし本当にそうだろうか。

 答えは過去に富豪と呼ばれた人々の資産をどう説明するかによる。

 経済学者でウェブサイト「Measuring Worth」(財産を評価する)の代表でもあるサミュエル・H・ウィリアムソン氏によると、説明のし方は少なくとも5つあり、それぞれ結果は異なるという。



 実質資産は最も知られている評価基準で、資産の相対的購買力を表す。資産額を消費者物価指数(CPI)に基づくインフレ率で調整して計算する。

 米国で初めて保有資産が10億ドルを超え、現代の富豪の中でベゾス氏の最大のライバルであるジョン・D・ロックフェラー氏の資産をこの基準で評価すると、資産額は今の価値で240億ドルにしかならない。

 これを逆に応用すると、ロックフェラー氏の富が初めて10億ドルを突破した1916年当時のベゾス氏の資産の価値は約65億ドルになる。

 ところが一部の専門家の間には、CPIのように平均的な世帯が購入するモノやサービスの価格で富豪の資産を調整するのはばかげているという意見がある。

 投資マネージャーで「The Birth of Plenty: How the Prosperity of the ModernWorld Was Created」(邦訳:『豊かさ』の誕生 成長と発展の文明史)の著者、ビル・バーンスタイン氏は「ジェフ・ベゾス氏は欲しいものは何でも買える。ベゾス氏は財産のほんの一部でさえ使い切れないのではないか」と話す。

 ウィリアムソン氏が提案した評価基準は実質資産の他に、世帯購買力、相対的勤労所得、相対所得、相対生産額がある。しかし、かたや石油王、こなた電子商取引で成功した大物の莫大な財産を比較するのにその全てが有効とは限らない。

 平均的な世帯が購入するもので大富豪の資産を評価してもおそらく意味がない。未熟練労働者や生産労働者の収入と比較する、相対的勤労所得という物差しで富豪の溢れるような資産を評価しても同じく意味がない。

 しかし残りの2つの基準――相対所得と相対生産額――はヨット一式の価値を評価するのに有効だ。2つとも国内総生産(GDP)、つまり一つの国の中で一定期間に生産された最終的なモノとサービスの価値を使って計算する。

 相対所得はステータスを測る評価基準で、現在の1人当たりのGDPを比較年の1人当たりのGDPで割ったものに比較年当時の金額をかけて計算する。

 この基準では、ロックフェラー氏の資産は現在の価値で1270億ドルとなり、ベゾス氏の資産より約15%少ない。

 ウィリアムソン氏によると、これは1916年の1人当たりのGDPに対する10億ドルの割合と、現在の1人当たりのGDPに対する1270億ドルの割合が同じ、ということだ。

 影響力の大きさを測る物差しである相対生産額も算出方法は似ている。こちらは現在のGDPを比較年のGDPで割り、それに比較年の金額をかける。

 この評価基準で見ると、ロックフェラー氏の資産の現在の価値は4070億ドルとなり、ベゾス氏の資産の3倍弱になる。

 これを対GDP比で表すと、ロックフェラー氏の資産は1916年当時のGDPの2%に相当し、ベゾス氏の資産は現在のGDPの0.7%程度にとどまる。

 ベゾス氏は資産の多くをアマゾンの株式として保有している。7月にブルームバーグのビリオネア指数にベゾス氏の純資産が掲載されたときは、株価は変動するためこのような高評価は長続きしないとの見方があった。

 ウィリアムソン氏は市場の気まぐれをこう説明する。「(保有株に)1株100ドルの値が付くかもしれない。だが、誰も買わなければ何の価値もない」

 遠い昔の富豪は今とは異なる問題を抱えていた。

 最近の富豪は別として、「史上最大の富豪」として名前が挙がった人達はイスラエルのソロモン王やマリの王、マンサ・ムーサなど多くが大昔の人物で、財産や経済状態を立証するのは事実上不可能だ。一部には、いずれにしても比較ができるようなものではないという意見もある。

 「14世紀半ばにマリで1トンの黄金を保有しているとしよう。物を買うのに黄金を国外に持ち出すだけでも一仕事だ。たとえ持ち出すことができたとしても、買いたい物すべてをラクダで運ぶことはできない。私ならむしろ今いるところにとどまり、ミドルクラスとして十分な収入があるほうがいい」(バーンスタイン氏)

 それでもイスラム教徒だったムーサは数千人を引き連れてイスラム教の聖地メッカまでの6000キロを超える旅に出て黄金をばらまき、心ならずもその後10年以上にわたってエジプト経済を混乱させたと言われている。

 話を戻そう。ベゾス氏は富豪の資産を評価するにふさわしい基準の一つでは現代史上最大の富豪だ。しかし別の基準ではそうではない。

 どちらが正しいのだろう。

 結局のところ、ぜいたくな問いにたどり着いた。



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