自由貿易網拡大 – 福井新聞

Home » 01GDP(国内総生産) » 自由貿易網拡大 – 福井新聞
01GDP(国内総生産) コメントはまだありません



国内農業の強化が急務だ

2018年7月23日 午前7時30分



 【論説】日本と欧州連合(EU)が、経済連携協定(EPA)に署名した。また、環太平洋連携協定(TPP)の参加11カ国は首席交渉官会合で、来年に見込まれる協定発効後に参加国拡大に乗り出すことで一致した。自由貿易網の広がりは、経済成長を促す基盤となる。保護主義への傾斜を強める米国に政策見直しを迫る材料ともなるだろう。ただ、畜産、酪農など国内農業は今後、熾烈(しれつ)な競争にさらされる。効果的な経営強化策の実施が急務である。

 日欧EPAは世界の国内総生産(GDP)の3割、貿易総額の4割を占める世界最大級の自由貿易圏となる。特に自動車輸出の関税が8年目に撤廃されるのはインパクトが大きいだろう。議会の承認手続きを経て、来年3月までの発効を目指している。最終的に双方の9割以上の品目で関税が撤廃される。

 TPPは米国が離脱したものの、日本とメキシコが国内手続きを終え、シンガポール、オーストラリアなど4カ国も年内に作業を終える見込み。6カ国以上が国内手続きを完了すれば60日後に発効。さらに英国、韓国、タイ、台湾などが新規加盟に関心を示しており、世界の中で存在感が増していきそうである。

 ただ、関税引き下げにより海外製品との競争が激化する農家などは試練を迎える。政府は日欧EPAで年1100億円、11カ国のTPPで年1500億円の農業生産減少が生じると試算している。経営強化策を着実に行き渡らせなければならない。

 例えば本場欧州の良質なチーズが安く入るようになるのは家計には恩恵だが、国内事業者は零細経営が多く、早くも戦々恐々だ。自治体によっては、TPPより日欧EPAの方が影響が大きいとの予測もある。

 政府は影響軽減の国内対策を行うとともに、新規市場開拓に打って出る農家を積極的に支えるべきだ。農業や食品業を犠牲にするのではなく、むしろこれらの業種にも発展の契機をつくれるかどうかが自由貿易圏の成功に向けた鍵となる。

 米国が突き進む保護主義的政策は一般に、輸入品に高関税をかけ国内産業を海外との競争から守る狙い。しかし、国際分業が進む中では企業は部品や原料の調達コストがかさみ、かえって競争力を失うと指摘される。消費者は高い買い物を強いられ、報復関税を受けるために輸出市場も縮小する。本来、デメリットが目立つ政策である。

 ただ、海外製品締め出しにより短期的に業績を伸ばす企業はある。中間選挙を控え、国内企業の支持を当てにするトランプ大統領が保護主義にこだわるのはそのためだ。

 しかし、中間選挙の結果にもよるが、米国もいずれは景気減速のリスクが高い保護主義を排除し、自由貿易重視に回帰せざるをえない時期が来るのではないか。TPPの枠組み強化など、自由貿易圏拡大を日本がリードしておくことは、米国が復帰を図ってきた際の主導権確保に重要だ。

関連記事



コメントを残す