トランプ大統領が望んだ貿易戦争とは-QuickTake – ブルームバーグ

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トランプ米大統領は2週間の間に多数の国を対象に関税賦課を命じ、中国による米企業買収を阻止し、中国からの将来の投資に新たな規制を求めた。これに対抗し中国は、米国から輸入する128品目への関税を発動した。エコノミストは世界が全面的な貿易戦争の瀬戸際にあり、報復合戦や激しい言葉の応酬、世界貿易機関(WTO)への提訴などの事態に至りかねないと警告しているが、WTOの対応力は不十分である恐れもある。

1.貿易戦争とは何か?

  辞書には 「国と国が相手の貿易に悪影響を与えようと互いに輸入制限措置を講じ、経済的に対立すること」と説明されている。トランプ大統領の関税とこれに他国が対抗措置を講じる構えを見せていることは、この定義に当てはまる。過去数百年に無数の分野で多数の国が保護主義的な小競り合いを繰り広げたこともそうだ。最近の事態は、トランプ大統領が知的財産権を盗んだと中国を名指ししたことで、本格的な貿易戦争が始まるとの懸念を強めつつある。鉄鋼製品を巡る米中両国の報復合戦や、国家安全保障を引き合いに出して自らの行動の一部を正当化するトランプ大統領の姿勢は、他国による同様の主張を呼び起こすパンドラの箱を開けることになりかねない。欧州連合(EU)が対抗して関税を課せば追加制裁も辞さない姿勢をトランプ大統領が取っていることも、貿易戦争の雰囲気を強めている。

2.以前の貿易戦争では何が起きたか?

  最も悪名高い例の一つは1930年に米議会で可決されたスムート・ホーリー法。これは大恐慌を深刻化させた原因とされることが多い。同法は米国の関税を平均20%引き上げ、まず国内の農家を保護した。その後、他の産業も保護を求めたことから対象が拡大。需要が落ち込む中、各国は自国通貨の切り下げを通じて金準備の維持を急いだり、貿易障壁を高めたりしたことから、世界の貿易は急速に落ち込んだ。

3.貿易戦争で誰が勝利するのか?

  歴史を参考にするなら、勝者はいない。米国際貿易委員会(ITC)によると、2002年にブッシュ大統領(息子、当時)が鉄鋼関税を引き上げた際、米国の国内総生産(GDP)は3040万ドル(現行レートで約31億2000万円)減少。 米国の雇用は約20万人失われ、そのうち約1万3000人は粗鋼生産の労働者だったとの見積もりもある。

4.トランプ大統領のこれまでの動きは?

  トランプ大統領は、何十年にもわたり知的財産権が盗まれた報復として中国からの輸入品最大600億ドルに関税を賦課する方針だが、具体的な品目は依然不明。鉄鋼とアルミニウムに対しては25%と10%の関税をそれぞれ課した。これを受け中国は同国も関税で反撃できると主張した。トランプ大統領はEUなどの同盟国を一時的に鉄鋼・アルミ関税の適用除外としたが、これらの国が適用除外を継続するために米国に譲歩すると大統領は期待している。

5.なぜトランプ大統領はこの戦いを引き起こしたのか?

  トランプ大統領は3月2日にツイッターへの投稿で貿易戦争を「良いものだ。勝つのは簡単だ」と宣言した。大統領の焦点は引き続き米国の貿易赤字削減だ。北米自由貿易協定(NAFTA)や環太平洋連携協定(TPP)のような貿易協定から退くことは、ラストベルトと呼ばれる地域でトランプ大統領の支持基盤となっている有権者を引き付けることにもつながる。

6.誰が報復したのか?

  中国は米国のワインや果物、豚肉、鋼管など30億ドル相当に対する関税を4月2日に発動。対象とされた128品目の多くは16年大統領選でトランプ氏を支持した州から輸出される品々だ。これまでのところ、米国が中国に大量に輸出する大豆などの農産物は対象となっていない。米国にとって最も大きな心配は、米国の最大の債権者である中国が報復として米国債購入を縮小することだ。3月23日に発動された鉄鋼・アルミ関税に対し、その他の国の多くは一時的に適用除外とされたため報復していない。ただ、EUは不満で35億ドル相当の米国製品に25%の関税で対応すると警告した。中国と同様にEUは特に、二輪車やジーンズ、バーボンウイスキーを含む米国の象徴的ブランドなどトランプ氏の政治基盤の一部である州の製品に焦点を当てるとしている。これに対しトランプ氏はEUが実行に移せば欧州からの輸入車に25%のペナルティーを課すとくぎを刺した。

7. WTOはいつ関与するのか?

  米国は3月23日に技術ライセンスに関してWTOに中国との「協議要請」を申請した。中国もWTOに、独自の関税で米国の鉄鋼関税に対抗する可能性を通知。ただ、急速に進む対抗措置はWTOの幾分冗長な審議プロセスを試すことになる可能性がある。

8.米国の関税が裏目に出る可能性は?

  ある。鉄鋼関税を例に挙げてみる。雇用者数は製鋼業より、鉄鋼を購入する自動車メーカーなどの産業の方が多い。一部の消費者もより高い代金の支払いを余儀なくされる可能性がある。貿易摩擦が米金融当局者の望む以上にインフレ率を押し上げれば、当局は予定より積極的な利上げの必要性を感じるかもしれない。一方で、関税が失業や景気減速という結果を招けば、当局は利上げペースを緩める方針となりかねない。

9.関税は貿易戦争の唯一の武器か?

  そうではない。他にも多くの手段がある。トランプ大統領が既に行っているように、中国による対米投資の抑制が一例だ。自国通貨を押し下げる口先介入もある。外国製品を締め出し国内企業を保護する手段も長年各国が使ってきた。トランプ大統領は中国が政府補助を利用し国内産業をてこ入れしていると批判している。

ユーラシア・グループの米国経済担当マネージング・ディレクター、キム・ウォレス氏がトランプ大統領の貿易政策について解説

(出所:Bloomberg)

原題:Trump Wanted a Trade War. Here’s What One Looks Like: QuickTake(抜粋)





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