強権シシ大統領が再選、エジプト国民「安定」を支持 – 日本経済新聞

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 【カイロ=飛田雅則】エジプトの選挙管理委員会は2日、3月に実施された大統領選挙でシシ大統領(63)が勝利したと発表した。シシ氏の得票率は約97%。政権が圧力をかけ有力候補の拘束や出馬辞退が相次いだことも影響したが、2011年以降に悪化した治安と経済の改善を優先する「安定」志向の有権者の支持を集めた。2期目もテロ対策と経済改革が課題だ。どちらも道半ばな上、強権政治への懸念の声も高まっており、道は平たんではなさそうだ。

 今回のシシ氏の得票率は約97%となり、前回の14年選挙とほぼ同様となった。政権側は国民の圧倒的な支持が得られたとみているもよう。ただ投票率は約41%と、14年選挙の約47%を下回った。大統領の任期は4年で3選は禁止されている。シシ氏にとって最後の任期となる。

 エジプトは11年2月、中東の民主化運動「アラブの春」により長期独裁のムバラク政権が崩壊した。それ以降、治安悪化から主要産業である観光業が低迷し、海外企業の投資も滞った。国民に「革命疲れ」が広がる中、シシ氏は13年に国防相として事実上のクーデターを主導。イスラム原理主義組織出身のモルシ大統領(当時)を追放した後、選挙を経て14年6月に大統領に就任した。

 シシ氏はテロの脅威がなくなれば、経済が好転するとみる。実際、シシ氏の出身母体の軍主導による治安維持策で、11年の政変直後に1%台に急落した経済成長率は、ここ数年は4%台に回復している。海外直接投資の流入額も17年度は77億ドル(約8200億円)と政変前の水準を超える。

 シシ氏の手腕を評価する声がある一方、強権的な手法に対する懸念も根強い。今回の選挙戦でも、出馬に意欲をみせた元参謀総長ら有力候補が拘束されるなど異様な展開となった。政権が圧力をかけたとみられ、対抗馬は1人という事実上の信任投票との見方から、選挙に対する国民の関心は低かった。

 街にはシシ氏の横断幕ばかりが目に付き、「茶番」との批判をかわそうと棄権した場合は選管が罰金を科すと報じられるなど投票率アップに躍起となった。だが、投票率は前回に及ばなかった。

 治安や経済は回復途上だが、国民が満足する水準に至っていないのも事実だ。棄権した50代の女性会社員のラニヤさんは「シシ氏は独裁者だ。強権の割に治安や生活は改善していない」と憤る。投票を棄権し政権への批判を表明した層もいる。

 東部のシナイ半島には過激派が潜伏し、治安部隊との戦闘が続く。カイロなど大都市では治安は改善しているが、予断を許さない。

 経済面では、国民の負担が増している。財政悪化で支援を要請した国際通貨基金(IMF)から経済改革を要求され、食料やガソリンなどの補助金を削減した。変動相場制に移行して通貨エジプトポンドが対ドルで暴落したことで、物価は30%以上も上昇し、国民の不満は高まっている。

 シシ政権は経済面でも、軍主導で新首都建設など大型計画で投資の呼び込みを狙う。だが、建設や食品など多くの分野で軍傘下の企業が幅をきかせ、民業を圧迫する。軍の経済活動は国内総生産(GDP)の最大4割とみる識者もいる。「軍の企業との競争は最大のリスク」(ある企業経営者)との指摘は多い。

 民間企業の育成や雇用創出を妨げる一因にもなっており、有力野党の元党首、サイード・バダウィ氏は「政権が雇用をつくり出せるかが課題だ」と指摘する。失業率は10%強で高止まりし、若者では40%に達するとの見方もある。職を持たず、自由のない若者の増加が「アラブの春」を誘発した。過激思想の温床にもなるだけに、放置すれば社会の不安定化をもたらし、政権の基盤を揺るがす可能性もある。





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